『毎日新聞』2007年11月21日付夕刊 9月入学:不人気 就職期合わず、授業編成困難 学長裁量で可能に、規則改正へ ◇制度変えても無意味の声も 秋入学を4月入学に戻す大学が現れるなど、政府が推進する9月入学は学生に不人気。文部科学省は、各大学が秋入学を導入しやすくしようと、学長裁量で学年の始まる時期と終わる時期を決めることができるように学校教育法施行規則を改正し、12月下旬に施行する方針を固めた。だが、大学関係者からは「実施は難しい」との声も出ている。【高山純二】 9月入学をめぐっては、大学の国際化などを目指して、政府の教育再生会議が今年6月の第2次報告で大幅促進を提言した。政府の「骨太の方針2007」でも「大学の4月入学原則を一層弾力化する」と盛り込まれた。 これを受け、文科省は大学の学年について、学校教育法施行規則の「4月1日に始まり、3月31日に終わる。学年の途中にも入学・卒業させることができる」との規定を「学年の始期および終期は学長が定める」などと改正し、大学の判断で学年のスタート時期を9月にできるようにする。 4月以外の入学を導入している学部は、00年95学部で、2607人が入学した。05年には322学部まで増加したが、逆に入学者数は1569人まで減少した。 大学院は研究科数・入学者数ともに増加しているものの、学部段階では高校卒業や就職時期に合わない9月入学が敬遠されている現状が浮かんでくる。 94年度から順次計3学部で「秋季(10月)入学制度」を導入した東洋大は06年度、募集を停止し、4月入学に戻した。東洋大広報課は「4年で卒業できる学生がもう半年在籍し、4年半で卒業する人が増えた。05年度は日本人の志願者がゼロ。雇用サイクルに合わないことが(志願者減の)一番の原因」と分析している。 また、東京大の小宮山宏学長は「4月入学が『国際化』に支障があるかというと必ずしもそうではない。また、カリキュラムを(4月と9月の)2本走らせることは、ものすごく大きな問題になる」とカリキュラム編成の難しさも指摘する。 大学の事情に詳しい出版社「大学通信」の安田賢治取締役は「入り口(入学)の機会だけが増えても、出口(就職時期など)が変わらなければ普及はしない。(9月入学は)社会全体で考えなければならず、制度だけをいじっても意味がない」と話している。 |