『高知新聞』2007年10月24日付夕刊 話題(夕刊記者コラム)

「大学って!?」


緑に囲まれた古びた講義棟。一列に並んだ背の高いヤシの木。高知大学の朝倉キャンパスは「国立大学法人」として体制が変わった今も、20年前とほぼ同じたたずまいで卒業生を迎えてくれる。それなのに・・・。

あの朝の様相は違っていた。「今日は報道関係は学内に入れないようにとのことです」と守衛さん。非公開の学長選考会議を「公開にせよ」と迫ったわけでもないのに、なぜ? こちらを見張るかのように、会議の行われている棟の前で立ち続ける職員には哀れささえ感じた。

学生たちは昔も今も、のんびりと地方のキャンパスライフを送っているように見える。学長が誰であろうが興味ないかもしれない。だが、教職員たちの話を聞けば聞くほど、学内は「平穏」とは言えない。「国立大学法人」そのものが学長の権限を担保する仕組みになっているとしても、今の高知大で起こっている事柄は一般感覚と懸け離れていると言わざるを得ない。

「ミスか不正があった」とされる学内意向投票。おおよその話はつかんでいたが、仮にも大学の現場でそんなことがあるのかと信じたくない思いでいた。だが、選考会議は会見で淡々とその事実を認めた。「初めと後の得票数のどちらが正しいか判断のしようがない」と。

法的に参考でしかない投票であっても、一度確定した票を「整理」のため開けていいのか? 公職選挙法の適用を受けるものでもないから、何があってもいいのだろうか? まさしく古い「象牙の塔」体質を露呈した今回のごたごたを、学長指名による学外の選考会議のメンバーはどう納得し、受け入れたのだろうか。

小中学生の生徒会長選びでもこんなことは起きない。
(広末智子)