『高知新聞』2007年11月22日付夕刊

高知大を想う−−歴代学長に聞く 6 山本 晋平氏
法令遵守徹底しているか


わたしは現在、香川大の監事を務めている。監事の役割は、国立大学法人の社会的使命を十分理解した上で、法人化の趣旨が生かされるような大学運営がなされているかどうか、大学の業務執行部局から独立した機関として客観的に判断し適時適切に意見を具申することだ。

今回の高知大の学長選考をめぐる経過を聞くにつけ、なぜ監事は動かないのかと思う。国立大学法人法の下、文部科学省から任命されるのは学長と監事だけ。監事は特に人事や組織面での管理について、学内外に向けて公平に行動しなければならない。今回のことがあれば積極的に監査を行い、詳細な報告書を上げるのが当然で、わたしならそうする。

また、文科省から任命されるということは、つまり「準国家公務員」。そう考えると、意向投票は「参考にしかすぎない」と言っても、その過程で仮に不正に当たる行為があったとすれば、私見だが、これは公職選挙法に違反する可能性もあるのではないか。コンプライアンス(法令遵守)の観点からも問題は重大だ。そもそも、高知大のコンプライアンスに関する規定や規則はどうなっているのか。それをどこまで徹底しているのか。

〈香川大では、コンプライアンスを推進するため、具体的な「行動規範」とガイドラインを定めている。その中には、「大学の常識と社会の良識がかけ離れたところに不祥事が発生する」とし、「その行動は公明正大・透明に行っているか」「事実を隠していないか」などの「問いかけ」の項目がある〉

今回の件は、ここ香川大でも学長をはじめ理事らも非常に注目して見ている。高知大はこのまま現学長の再任を推し進め、文科省に上申するのだろうが、ここまで不透明な経過で選ばれた学長を文科省はそのまま良しとするのかどうか。「文科省は目をつむって判を押すのでは」とする見方がある一方で、「そのまま認めていいはずがない」とする声もある。

とにかく、これだけ学内外に不信感が広がっているのだから、現学長はこの混乱にきちんと責任を取ること。そして、すべての大学の構成員は胸に手を当て、自分の行動に悔いが残らないか、あらためて考えてほしい。前学長として今の高知大を憂える−−。

(おわり)


やまもと・しんぺい   高知大農学部卒、京大大学院農学研究科博士課程修了。昭和40年高知大農学部講師。助教授、教授、遺伝子実験施設長、農学部長などを経て平成11年第9代学長に就任。高知大が高知医大と統合する15年9月まで1期務めた。17年から香川大監事。70歳