『高知新聞』2007年11月18日付

高知大学長選考 溝深く
教授ら 徹底追及へ結束
大学側 再任手続き粛々
学生4割 2000人超署名


高知大学が国立大学法人移行後行った初の学長選考をめぐる学内の混乱が収まらない。「ミスまたは不正があった」とされる学内意向投票の結果を参考に、学長選考会議が先月17日に現学長の相良祐輔氏の再任を決定して以来、教授会や学生有志などが決定の無効や真相究明を求めているが、同会議は選考をやり直す考えのないことを強調。これを受け、教授らは「選考会議と現学長は、逃げ切りを図ろうとしている」と反発を強め、公正な学長選考を求める組織を結集し、学生の署名も全学生の4割に当たる2000人を突破。徹底追及の構えをみせている。もっともその一方で、相良氏再任に向けた事務手続きは着々と進行している。
(高知大学長選考取材班)


不自然過ぎる

16日夜、高知市の朝倉キャンパスの教室に教授や教職員ら60人近くが集まった。選考会議の決定無効などを求めてきた、医学部と農学部を除く教授会などが、学内の動きを一本化するための組織、「公正な学長選考を求める会」(代表世話人=小澤萬記・人文学部副学長)を結成するための集会だ。

集会では二通りの得票数が判明し、「ミスか不正があった」とされる問題の学内意向投票について、投票管理委員会の委員を務めた教授らが開票作業の流れを簡単なイラストで“再現”。「実際、開票作業は真剣に行われた」と説明した。

これに対し、参加者からは「誰がどのタイミングで金庫に入れた票を『整理したい』と言ったのか?」「なぜ後の得票数を記した経過説明書を作ったのか」など、開票作業終了後、委員らが再招集された経緯が「不自然過ぎる」とする質問が続出した。

議論は1時間以上続いたが、最終的に、いったん得票を確定した後に、事務局が票に触れたこと自体が問題だとする、これまでの各教授会での決議内容を確認。小澤代表が「学内外の批判にまともに応えようとしない選考会議のやり方にはっきりと異議を唱える」とし、同会の結成を宣言した。

不正でない

一方、相良氏の再任を決めた学長選考会議は今月7日に同大ホームページ上に見解文を発表して以来、沈黙していたが、教授らによる集会が開かれる16日になって、これまで無応答だった公開質問状の一部質問に回答を寄せた。

それによると、投票管理委員会が票を確定後に事務局が票に接触したことについて、「開票済みの票の管理方法などについて定めがなく、適正な保管をするため整理等を行おうとした」と説明。「事務局の不正ではない」との考えを主張している。

河本朝光事務局長によると、見解文にあった現学長に対する調査委員会の設置要望については、14日付で要望書を作成し、篠和夫選考会議議長が、相良氏に手渡した。さらに同じ14日に開かれた役員会で、選考会議が次期学長に相良氏を決定したことを河本局長が報告。同局長によると、この時点で相良氏の次期学長就任に向けた学内手続きは「完了」しており、「文科省へ申請する日程を調整中」の段階という。

文科省は取材に対し、「基本的に各大学の選考会議が決定し、申し出のあった学長を文科省が任命することになる。(学内の混乱については)コメントのしようがない」と話している。

納得いくまで・・・

一方、真相究明と公開での説明を求めて署名活動を展開している学生有志の署名は現在、同大の全学生の約4割に当たる2千人以上が集まっており、近く、選考会議の各委員や学長に、質問状を添えて提出する。

有志の1人は「学生として疑問に思うことを、学長にとどまらず、文科省やメディアにもぶつけたい。納得がいくまで説明を求めていく」と話している。