『中日新聞』2007年11月20日付

名古屋大と愛知の私大が共同大学院 連携し薬剤師を養成


名古屋大と、名城大など愛知県内の薬学部を持つ私立大が、高度な薬学知識を持つ専門薬剤師を育成する地域連携型の大学院「創薬科学研究科」を共同で設置する方針を固めた。現行の学校教育法では複数大学共同の学部や大学院設置は不可能だが、文部科学省は実現に向けて来年度中の法整備を進めており、これをにらんだ動き。実現すれば、国立大と私立大が共同で大学院を設置するという、全国でも先駆的な試みとなる。

私立大は名城大のほかに愛知学院大、金城学院大が参加を検討。4年制の博士課程で、学位は参加大学の連名となる。2011年秋に研究科を新設し、12年春から学生を受け入れる予定。名大の医科学修士課程の修了者と、名城大などの6年制薬学部の卒業者が中心となる見込みだ。

名大は設置に向けた研究調査費を、国に予算要求しており、承認されれば今後検討委員会を設置して入学定員や指導方法、施設など具体的内容を検討する。

生命科学の分野では、人間の遺伝子構造の解明により、がんや神経性疾患など遺伝子が引き起こすタンパク質の異常のメカニズム解明が進み、化学合成や生物活性などの専門知識を持ち、病気に効く薬をデザインできる創薬学を研究する人材育成が急務となっている。

私大の薬学部にとっては、06年度から6年制への移行により臨床実習が増え、医療機関の実習先の確保が求められており、同研究科設置をきっかけに、付属病院を持つ名大医学部と連携を強めることができる。

名大にしても、医学部がありながら旧7帝国大学で唯一薬学部がなく、医学の基礎研究を臨床応用に生かす研究態勢の強化が急がれていた。同大医学系研究科の浜口道成研究科長は「中部地方はものづくりが盛んだが、バイオ・創薬の分野で立ち遅れていた。創薬科学研究科の設置により、薬学分野で活躍する人材を育てるシステムを提案したい」と話している。

【6年制薬学部】2006年度から薬学部を従来の4年制から6年制に移行し、薬剤師国家試験の受験資格を6年制学部卒業を要件とした。医療技術の高度化に伴い、臨床実習を充実させ医療薬学を学ばせる目的。一方、薬学の基礎教育を中心とした4年制を併存させている大学もある。