『中国新聞』2007年11月19日付

学力低下に危機感 大学淘汰の狙いも


【解説】政府の教育再生会議が大学入試改革の目玉として、進学志願者への「高卒学力テスト」導入の検討に入る。背景には、大学全入時代の到来をにらみ、入学者の学力低下傾向に歯止めをかけなければ、最高学府にふさわしい教育を行えなくなる大学が拡大するとの危機感がある。

改革素案が「大学入学時に必要な学力が備わっていない学生が増加」していると指摘するように、大学教員の間から「九九さえできない学生もいる。そんな学生に何を教えればいいのか」(国立大准教授)との声が聞かれる。

再生会議関係者は「誰でも入れる大学にも助成金という名の税金が投入されている。大学淘汰を促して『質』を担保し、国際競争力の基盤となる人材を育成することが必要だ」と指摘する。

ただ受験生の負担が増すことへの批判が広がる可能性もあり、第三次報告に盛り込まれても、直ちに実現に向かうかは見通せない。

文部科学省の調査によると、高校で学ぶ内容を大学で教える「補修」は二〇〇五年度で二百十校と全体の約三割にも及ぶ。一方、少子化が進む中で大学側は学生の囲い込みに躍起。定員割れしている四年制私立大は全体の約四割に上っているとされる。大学進学のハードルを上げる高卒テストには、大学経営者から反対論が噴き出すことも想定される。