『高知新聞』社説 2007年10月19日付

【学長選考】透明性が求められる


「地域の大学」を標榜(ひょうぼう)する大学のトップの選考過程がこれほど不透明であっていいはずがない。高知大の法人化後初の学長選考は「地域に開かれた大学」どころか、大学の閉鎖体質を県民にさらけ出してしまった。

国立大の学長選考は大学法人化で様変わりした。従来は教員による学長選挙で決まっていたが、法人化後は学内と学外のメンバーで組織する学長選考会議が最終権限を持つと法律で規定されたのだ。

高知大も学内七人、学外四人の計十一人で構成する選考会議で選ぶことになっている。

今回の選考は現学長の相良祐輔氏と同大大学院黒潮圏海洋科学研究科長の高橋正征氏による二人で争われた。選考会議は学外委員一人が欠席したため十人で審議を行い、議長を除く採決の結果、五対四で相良氏の再任となった。

しかし、選考会議の規則には「議決には出席者の過半数の賛成がいる」とあり、学内からは「規則違反で無効だ」との指摘が出ている。選考会議では選考の手順を会議での合意を得て決めたようだが、規則との整合性について明確な説明が必要だろう。

選考会議に先立って行われた大学教職員による「学内意向投票」も不透明感を際立たせた。ずさんな票集計、票管理によって二通りの結果が出る異常事態となった。いずれも高橋氏の得票が上回っていたが、不手際への説明も不十分なままだ。

ただ、意向投票結果も法人化後の学長選考においては何ら拘束力を持たない。あくまで選考会議が決定権を持つため、次点候補が学長に選ばれても手続き上は問題ないのだ。意向投票の結果を覆した例はこれまでにも他大学でいくつかある。 こうした問題が起きているのは法人化によって、学長に強い権限が集中したのと無関係ではないだろう。

トップダウンの指示命令は、学内の合意形成を重視して運営されてきた法人化前と大きく異なる。改革を求めるトップと教職員との間に摩擦が生じても不思議ではない。

だからといって、大学が閉鎖的になっていいわけがない。法人化の目的の一つは民間の知恵や発想を大学経営に生かすことにある。学外から委員が入っているのは選考に公平さと透明性が求められているからだ。

「地域の大学」への期待は大きい。県民とともに歩むなら外にも顔を向けるべきである。