『京都新聞』2007年11月14日付

学長選、再び色分け投票
滋賀医科大、職種別に用紙


滋賀医科大(大津市)は12月の次期学長選考で行う意向聴取投票で、職種ごとに色分けした投票用紙を用いることに決めた。「各職種がどの候補を推すか見極めたい」と大学側は説明するが、前回選考で得票が少なかった候補が学長に選ばれた経緯もあり「教員票だけを重んじているのではないか」などと反発の声も上がっている。

学長選考は、学内外の委員でつくる選考会議が決める。滋賀医大によると、選考の参考として、医師らすべての教員、役職のある看護師や技師、職員約460人が投票を行うが、その際、職種ごとに投票用紙を3種類に色分けする。

同じ投票方法は2004年の前回選考でも実施。開票結果で総数は発表したが、職種別の内訳は非公表だった。大学側は「選考会議で総数のみの公表を決めた」として今回も踏襲するという。

これに対し、学内では「不透明」「必然性がない」と批判がある。関係者によると、今月上旬、一部の部署が色分け投票用紙の使用をやめるよう要望書を提出した。

10月の医学科教授会では、前回選考の投票で最多得票しながら落選した野田洋一教授が「『教員票だけが10票差で負けたため落選した』と、ある選考会議委員から聞いた」と発言、同席した複数の委員から否定する意見はなく、波紋を広げた。色分け投票への賛成もあったが、「差別意識の現れだ」「結果をどう使うか明確でないのは問題」などの反対意見も出た、という。

前回選考では、「変革の初期に学長が交代することは得策でない」との理由で、獲得票数が少なかった現職の吉川隆一学長が再選した。野田教授は選考の無効を訴え、大津地裁に提訴したが、地裁は「意向聴取はあくまで参考」として野田教授の訴えを退けている。

■国立大学の学長選考 2003年施行の国立大学法人法は、学長決定権は学長選考会議にあると定める。選考会議は、学内の教授らで構成する教育研究評議会と学外識者らで構成する経営協議会がそれぞれ同数委員でつくる。法律上は必要ないが、選考の参考とするために投票による意向聴取投票を行うケースがある。滋賀医科大や新潟大、山形大、高知大では、意向聴取結果を覆す選考結果となり、論議を呼んだ。滋賀医科大と新潟大では訴訟に発展した。