『JAN JAN』2007年11月14日付

大学教員の負担が重くなっている


大学の教員はこの数年来、年を追うごとに忙しくなっている。10年前に比べたら、1.5倍は忙しくなったのではないかというのが、わたしのひそかな感想である。といっても何が忙しくなったのかは、仕事の範囲をどう定義するかによって違ってくる。大学の教員には研究、教育、学内行政事務という3つの仕事があるからだ。

研究だけとると忙しさは変わらない。

学内行政事務は、地方入試を実施するようになったとか、推薦指定校の高等学校をきめこまかに訪問するようになったとか、もろもろ仕事がふえている。とはいえ忙しいのは役職を引き受けている教員であって、そうでない教員の負担がそれほど重くなったわけではない。つまり教員間における負担の格差が拡大したのである。

教育の負担は格段に重くなった。担当コマ数も増えたし、試験は前後期2回実施するようになった。学生が成績評価に疑義を申し立てたときは回答しなければならなくなった。学生に対して講義についてのアンケートを実施するようになった。学年の授業日数も実質的にふえている。

要するに10年前に比べて教育サービスのメニューは格段に充実しているのである。ちゃんとした教育効果のある大学教育をおこなうために、きめこまかなサービスをしようというのが最近の流れである。

その反面、研究にかける時間が圧迫されている。というか、もう少しあけすけに言うと、すぐれた研究業績をあげている教員が、以前ほど重きを置かれなくなった。われわれ教員はなんといっても研究業績が第1であって、すぐれた研究業績をもつ教員は本来なら1目も2目もおかれるものなのだが、どうも最近は以前にくらべて0.8目くらいしかおかれなくなったように思う。

最初に大学の教員には研究、教育、学内行政事務という3つの仕事があると書いた。しかしそれは大学からもらっている給料に対応する仕事であって、大学教員はそのほかにも、社会にメッセージを発信するという役割を担っている。たとえば環境問題について警告するとか、福祉のあり方について提言するとか、著書を刊行するとか、マスコミに登場するとか、さまざまである。これがけっこう大事で、有名な教授を大勢擁する大学はそれだけで知名度も高くなるわけである。この面ではどういう変化があるか定かでない。

とにかく大学教員の仕事は忙しくなった。大学はもはやレジャーランドではない。ただし、それが研究をさかんにすることにつながっているかというと、うーん、どうなのだろうか。

(広岡守穂)