時事通信配信記事 2007年11月13日付

留学生政策の総合的検討に着手=文科省


文部科学省は、大学のグローバル化や学生同士の交流の在り方などを柱に、留学生施策について総合的な検討に着手した。文科、外務両省の担当局長で懇談会を始め、中央教育審議会(文科相の機関)にもワーキンググループ(WG)を設置した。現行の制度の枠組みでは「留学」とは見なされない3カ月以内の短期留学への支援制度なども課題で、関係各省との連携も視野に検討を進めていく。

留学生政策をめぐっては、中教審が2003年、日本の大学などの国際化や競争力強化、諸外国との人的ネットワークの形成などの観点から、(1)留学生の受け入れ・派遣の両面での交流推進(2)留学生の質の確保と受け入れ態勢の充実―を柱とした答申をまとめている。同答申は目標をおおむね5年間としており、「効果の検証など答申のフォローアップが必要」(留学生交流室)な時期を迎えている。

最近では、政府の「アジア・ゲートウェイ構想」(07年5月)、「骨太方針2007」(07年6月)や教育再生会議第2次報告(同)などが、国家戦略としての留学施策を求めた。教育の観点だけではなく、産業・外交政策を含めた政策の必要性が指摘されている。

中教審が答申した03年、海外からの留学生は当時の目標だった10万人を達成し、現在では約12万人となっている。そのうち中国・韓国・台湾など東アジアからの留学生が約8割。その中でも全体の約6割を占める中国は、急速な発展の中で高等教育の事情も変わってきており、「諸外国による優秀な留学生の取り合い」(留学生交流室)となっているのが実情だ。

日本の留学生交流の活性化に向けては、国家戦略や国費留学制度に加え、短期留学制度の充実も焦点となる。現在の日本の場合、留学生の受け入れは政府開発援助(ODA)での国際社会に対する貢献という面が強いが、短期留学が増えれば欧米諸国などを含む世界各国から優秀な留学生を受け入れ、ビジネス、産業政策につながることも期待される。

同省は今後、経済産業省などとも連携し、短期留学の位置付けや支援制度充実について検討する。さらに、諸外国に比べて厳しい状況にある留学生の宿舎の整備なども重要課題として取り組む方針。年内にもスタートする予定の中教審のWGでは、こうした点も含め多角的な視野から議論を進めてもらい、同WGの議論を踏まえ具体的政策を策定、推進したい考えだ。(了)