『高知新聞』2007年11月8日付

高知大学長選やり直さず
選考会議「結果に疑義なし」


高知大学の学長選考会議(篠和夫議長)は7日、学内外から不透明と指摘されている次期学長の選考過程について見解をまとめ、同大のホームページに掲載した。その中で「ミスか不正があった」とする学内意向投票を、あくまでも判断材料の一つと位置付け、「選考結果の有効性には疑義はない」と強調。今後の参考とするため、現学長の相良祐輔氏に調査委員会の設置を求めている。同日、取材に応じた篠議長は「学長選考をやり直す考えはない」と述べた。 (高知大学長選考取材班)

「見解文」は、まず学内意向投票が法律上必要とされる措置ではないことを強調。その上で学長選考を協議した10月17日の選考会議に出された投票管理委の経過説明書を添付し、選考会議の委員から「突き返すか、受け止めて先に進むかどちらかだ」「理論上、ミスも手を加えられた可能性もある」などの声が出たことを明らかにした。

見解では調査委員会の設置にも触れているが、取材に対して篠議長は、相良氏を学長に選んだ今回の選考結果に影響を与える調査ではないことを指摘。何を調査をするのかを決めるのは選考会議ではなく「組織の長である学長に御願いする。お任せする」と説明し、委員の構成も相良氏に一任する意向を示した。同議長は選考会議の相良氏再任決定に「ぶれはない」と強調し、調査は教訓を今後に生かすために行うとの考えを繰り返した。

「見解文」などで浮き彫りになったのは▽相良氏再任の結論は変えない▽意向投票はあくまで参考であり、開票をめぐる疑惑の解明を自ら行うつもりはない−−という選考会議の姿勢。決議や公開質問状などを提出していた教授らは「何ら新しい材料はなく、これで逃げ切ろうという姿勢しか見えない。現学長再任の結論ありきの出来レース」「(同会議の)学外委員は質問状の内容などをどこまで理解し、学内の状況を知っているのか」と憤っている。

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選考会議議長に聞く
調査委設置 学長に一任
開票作業に作為なし

篠和夫・学長選考会議議長への一問一答の要旨は次の通り。

−調査委員会設置をなぜ現学長に委ねるのか。
(調査が必要なのは)学内意向投票にかかわる問題がほとんど。投票管理委員会は選考会議の内部の一組織であり、調査委は同会議の外につくるのがいいということになった。意見はいろいろあったが、最終的に大学の組織の長である、相良学長にお願いすることになった。

−何の調査をするのか。
なぜ2種類の開票結果が出たのかを明らかにしたい。ただ、項目を具体的に選考会議として出しているわけではない。(議長の議決権などを含んだ)選考会議の規則のチェックにつながる調査になるかもしれない。規則には何も書かれていなかった。規則がきちんと整備されていれば問題の発生は防げたかもしれない。

−現学長は候補者の1人。それで公平で中立的な調査ができるのか。
それも考えたが、やはり組織の長にと。決めたのはそこまで。

−調査委員の人選は。
(それも)学長にお任せする。調査は今後の選考を改善するためだ。
 
−いったん確定した票に事務局が触れたこと自体が不正では。
(一連の)開票作業に作為はなかったと判断した。

−今回の見解文は、各学部の教授会や学生らから出されている決議や質問状への回答か。
基本的にはそうだ。足らない事項は別途、対応を検討したい。

−ホームページに見解文を掲載することが情報公開か。
今回は相当公開したと言えるんじゃないか。都合のいいところだけをピックアップしたという認識はない。(議事録の公開などについては)今後の検討課題。

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学長選考会議議長の「見解文」(要旨)


1 「学内意向調査」について
意向調査(以下、学内意向投票)は、学長選考会議の各委員が学長候補者の最終選考の「参考情報」として総合的に判断する材料の1つ。投票結果が選考会議前日に報道されたことは、大学人自身の問題として厳しく反省すべき点がある。

2 学内意向投票開票作業及びその後の経過について
(省略)

3 意向投票結果の報告について
選考会議で意向投票管理委員長が、(相良祐輔候補と高橋正征候補の2種類の開票結果の)経過説明書などを報告。委員長は、▽20票1束を作成したところまでは過誤はない▽両候補の票束を最終的に確認する際、氏名を確認せず2束ずつ数えた−−などと発言。選考会議は投票管理委員会の報告を参考に各委員が総合的に判断することで合意。

4 学長候補者の選考に関する規則上の取り扱いについて
(省略)

5 学長候補者の選考手順について
選考会議議長が投票での意見集約を提案し委員全員が承認。議長から▽議長は投票せず可否同数時は議長が決する▽議長を除く9人の過半数を獲得した者を学長候補者とする−−などの提案があり、全員が承認。

6 最後に
(選考会議の)過半数の解釈が規則違反であるかのような見解は誤解だと考えている。(意向投票の2種類の開票結果は)いずれも高橋候補が第1位。(それを)十分参考にして各委員が最終的に選択した。選考結果の有効性に疑義を生じさせるものではない。意向投票の開票作業とその後の経過を踏まえ、今後の改善点などを検討するためにも事実調査が必要と判断。学長(相良氏)に速やかな調査委員会の設置を要望する。混乱を招いたことを本学の全構成員および学外関係者に深くおわびする。