『毎日新聞』2007年11月7日付 公設民営の行方:岐路に立つ鳥取環境大/5止 /鳥取 ◇「教育の中身で勝負」−−青木・県企画部長インタビュー 県立化を求める声もある中、県は鳥取環境大をどう評価し、展望しているのか。担当する青木由行・企画部長(44)に聞いた。【聞き手・小島健志】 ――環境大の県立化を求める声をどう考えるか 立ち上げの時からいろいろな議論があって、「公設民営でやりましょう」ということで出発した。入学者が減っている状況を受け、看板だけ「県立」をつけるというのは、受験者や保護者を軽く見ている。どんな教育を受けられるのかが大事で、中身で勝負しないといけない。 ――県はどう支援していくのか 大学の魅力アップは必要だが、財政的な措置は当面、考えていない。まだ、いろいろなことを考えないといけない。 私が生活環境部次長の時、廃棄物処理施設に関する条例を作ったが、孤独な作業だった。もし学の立場からの分析や提言があって、うまく意見のやり取りができていれば、と思う。行政の対向軸として、大学側から、専門的な見地で健全な批判をしてもらうのも大事なことだ。 そのため、プロジェクト研究などで、学生に行政の検証や調査、制度の企画、立案をしてもらうのはどうかと提案している。行政のホットな話題に魅力を感じる人もいるだろう。 ――現在の環境大をどう評価するか 入学者が定員に届いていないことは事実だが、出口となる就職は良い。特に県内の就職が良く、私が聞く限り、総じて卒業生の評価が高い。まじめでコミュニケーション能力のある人が非常に多い。プロジェクト研究の成果だろう。 ――なぜ定員割れが続くのか 有名私大に入りやすくなったことなど、外的な環境の変化が大きい。環境大はそれに対応した有効な対策を十分打てていなかったことになる。ただし、就職状況からも教育内容に問題はなく、これまで取り組んできた方向性が間違っているという気もしない。 ――今後の展望は 今年の取り組みで成果が出るといったものでなく、入学者数が良くても悪くても手をぬける状況ではない。 県のこれまでの対応は不十分だった。大いに反省している。行政の意向を押しつけてはいけないが、学校経営に対して、前向きな関心を寄せ、積極的に提案していく。環境大と県と鳥取市とが密接にかかわり、非常に頼りになる大学としてその魅力を保護者や先生、受験生に届けることが大切だろう。 ◇“出口”わかりやすく 環境大の抱える問題を突き詰めれば「受験生や一般市民にとって就職という出口が見えない。大学のPRがうまくない」という点に行き着く。 そこで、学科再編の機を生かし抜本的な見直しを行うべきだ。例えば、排出権取引やエコファンド、地域通貨などを「環境ファイナンス」として専門的に勉強できれば金融業界や大手商社、メーカーへの道が開かれPRもしやすい。鳥取市の企業支援を利用し、店を出すのもおもしろい。 一方、「環境行政」という枠で、公務員養成などに、より力を入れても良い。県や市の行政評価を行い、条例作成に携われれば、学生にとって魅力的だ。定住対策などでは学生の視点が生きるだろう。 生き残る可能性はまだまだある。早急に次の手を打つことが求められている。【小島健志】 ◇ 環境大は年内の理事会で学科再編などを決める予定。船出から7年目、再起をかけ大きくかじを切る。(おわり) |