『毎日新聞』2007年11月3日付 公設民営の行方:岐路に立つ鳥取環境大/3 /鳥取 ◇「地元学生8〜9割に」 鳥取環境大を含む地方の中小規模の私大は多くが「冬の時代」を迎えている。日本私立学校振興・共済事業団の調査によると、全国の4年制私大559校のうち、今年度入学者が定員に満たなかったのは4割の221校。少子化が進む中、志願者が東京や近畿圏にある入学定員3000人以上の大規模校(23校)に集中する傾向が強まっている。 国の学校基本調査によると、県内高校出身の4年制大学入学者を環境大が収容した割合は、開学した01年度の9・1%から、今年度は4・5%にまで下がった。それに伴って鳥取大を合わせた県内進学者の割合も17・6%(01年度)から13・2%(07年度)までダウン。今年度の進学者2515人のうち2182人が県外へ流出した。それに対して、大都市圏への進学者数はほとんど変わらず、隣接する兵庫、岡山、広島、島根県への進学者数は、01年度の597人から今年度は729人へ増加。割合も6・8ポイント増加し全体の29%になった。 翌年度の志願者数を占うとされるオープンキャンパス。環境大では今年度、高校・浪人生計216人が参加したが、前年度の252人に比べ14・3%減った。その06年度も05年度の310人と比較すると18・7%減。実際の入学者数は227人(06年度)から185人(07年度)へ18・5%、志願者数も18・3%減っている。同様の傾向が続けば08年度入学者数は定員の半分(162人)を割る恐れもある。 実際、すでに実施された来年度のAO入試の受験者は計33人。06年度(52人)、07年度(47人)と減り続け、苦しい状況が続いている。 学生確保に向け鳥取市は、来年度から、市内の高校に通う生徒または市民が環境大に入学した際、入学金25万円の半分を支援。来春以降の卒業生が市内に就職し、市内に住所を持った場合も入学時の入学金の半分を援助する制度を新たに設けた。環境大としても世帯の所得が一定額未満の学生全員に、学費など学生納付金を半額にする制度を導入する方針を明らかにしている。 その一方で、公設民営型の先駆けとしてスタートし、善戦している私大もある。東北芸術工科大(山形市)は、山形県と山形市が75億円ずつ投じ、92年に開学した芸術系大学だ。デザイン工学部、芸術学部があり、今年(5月1日現在)の学生数は1998人。入学者は510人で同県内からの進学者が32%(161人)を占め、卒業生はデザイナーなどさまざまな分野で活躍している。 同大の野村真司・学生募集担当理事は「一度も入学定員(現在391人)を割っていない」と強調する。「今は、県や市から一切支援を受けておらず、県市関係者はもういない」と述べ、「私大」の立場を明確にしている。地域との交流を重ね、キャンパスは市民の憩いの場。学園祭には市民2000人が集うという。ところが、首都圏にある大学の地方入試などの影響で、3倍台を守ってきた志願倍率が下がり、今年度は2・1倍。野村理事は「かなり危機感がある。大学のビジョンや精神が大事。原点が揺らいではいけない」と生き残りの道を探る。 日本私立学校振興・共済事業団私学経営相談センターの比留間進・情報支援室長は環境大について「全国から学生を集めているところほど厳しい。『鳥取のための大学』をはっきりと標ぼうし、地元学生を8〜9割にする方が将来的に見て安定する」と指摘。その上で現在の危機を脱するため、▽中堅の学生をしっかり教育して就職させ、地元の評価を上げる▽環境分野で将来的にどういう夢が描けるのか具体的にアピールする−−ことが重要というアドバイスを送る。【小島健志】(つづく) |