『毎日新聞』2007年11月2日付 公設民営の行方:岐路に立つ鳥取環境大/2 /鳥取 ◇「環境で飯が食えるか」 鳥取環境大は再建に向け何に活路を見いだそうとしているのだろうか。 目玉研究として、JR鳥取駅から環境大の間の地域で3万人規模の循環型社会システムを構想している。まず、地域が出す廃食油から精製したバイオディーゼル燃料で、二酸化炭素(CO2)排出ゼロのエコバスを走らせる。廃食油の提供者やスーパーなどのレジ袋辞退者にはICカードを利用したバスなどに使える地域通貨を発行。バスの利用を促し、マイカー利用を減らすことで2020年までに50%のCO2排出削減を目指す。 壮大な計画だが、実際、昨年度にエコバスを走らせ地域通貨TUES(チューズ)を導入するなど、少しずつ具体化している。一方、学生自らがエネルギーを生産しようと食用油の原料となる菜種を栽培し収穫する研究も行われている。 また、学科の枠を超えチームを結成し、実践的な研究を行う「プロジェクト研究」は、コミュニケーション能力などを養えるとして評価が高い。古民家を安価に修復する方法なども考案された。就職活動では職員が親身になってあたり、学生一人一人の状況を逐一、把握。就職後の評判も良いという。 大学側の要請を受け、県内の各高校は大学PRのための場を提供している。9月13日、県立鳥取中央育英高(北栄町)の進路講演会では、急きょ環境大のための時間が割かれた。3年生約120人は、就職率の高さや地元の良さなどを話す同校OBらの説明に耳を傾けた。ある男子生徒は「環境大の名前は皆知っている」といい、同校3年の大丸紘範さんは「就職率が高いと初めて知った。地元にあることや、県が支援しているところがいい」と話し、反応は上々。 9月29日にあった今年度最後のオープンキャンパスでは、県立高校3年の女子生徒2人が「学校がきれい。先輩も親切だった」と話し、岡山市内の高校に通う女子生徒は、緑化された校舎を見て「雰囲気が良く本当に楽しそう」と期待を膨らませていた。 資格取得にも力を入れ、大学側が定めた約100の資格を受験する際、受験・検定料の半額を支援する制度があり、公害防止管理者、公務員試験対策やファイナンシャルプランナーなどの資格取得講座も開いている。 しかし、環境政策科2年の男子学生は「環境系の資格をとって就職したいと思って入ったが、現実は違っていた」と落胆する。受験に社会人としての実務経験などが必要な資格が多いからだ。「『環境』と名はついても文系なので、何を勉強しているのか聞かれても答えられない。もっと専門資格が取りやすい大学にしてもらいたい」と訴える。 学生にとっては、周辺に飲食店が少なく、交通手段が限られ、市中心部までバスで約20分という立地も魅力的とは言い難い。周辺の津ノ井地区は学生向けアパートの入居率が04年度は約80%だったが、今年5月時点では約56%にとどまり、約200戸が空き家。地域経済にも悪影響を与えている。 また、受験情報誌などの位置づけは約600ある私大の一つであり、学費、44〜49の偏差値(代々木ゼミナール調べ)などを勘案すると高校側として環境大を勧めにくい現状もある。ある学校関係者は「県教委に言われたら仕方ないが、保護者に環境大だけ優遇する理由をどう説明すればいいのか。一私大なのに」と冷ややかだ。また関係者に「県立なら安定感があり断然、反応はいいのに……」という声も根強い。 結局「きめ細かな教育や就職支援で評判はいいが、大学のPRがうまくない」「環境で飯が食えるのか。何をやっているのかよくわからない」という指摘が、環境大の現状を象徴している。【小島健志】(つづく) |