『毎日新聞』2007年11月1日付

公設民営の行方:岐路に立つ鳥取環境大/1 /鳥取


県と鳥取市が約200億円の巨費を投じ、県内2校目の4年生大学として01年に開学した「公設民営」の鳥取環境大(鳥取市若葉台北1)が危機的状況を迎えている。入学者は4年連続で定員を割り、昨年度決算で初めて赤字に転落。事態を深刻に受け止めた大学、県、市の三者は再び結束して学生確保に本腰を入れ、学科再編や入学者支援などの打開策を打ち出した。しかし、私大全体の4割が定員を割る時代に求められる「ブランド力」をどう備えていくのか、将来像は必ずしも明確でない。生き残りをかけ、模索を続ける大学の今を追った。【小島健志】

◇定員割れに危機感−−県、鳥取市

環境大は、県と市が土地や校舎などの施設費用を負担し、運営は私立大として学校法人が行う方式を採用した環境情報学部のみの単科大学。環境について考え行動する意識「環境マインド」を持つ人材育成を目指し、環境政策、環境デザイン、情報システムの3学科を置いた。

今年度の学生数は997人(07年5月1日現在、大学院除く)で、県内出身者が6割弱。これまで卒業生は主にサービス、建設、製造、流通、情報通信産業に就職し、今年3月卒業の3期生の就職内定率は94・5%になった。県内出身者が県内企業に就職する割合は約6割。公務員となった卒業生も計33人いる。

1学年の定員は開学時から変わらず324人。しかし、初年度469人だった入学者は、毎年減り続け、04年度からは定員割れ。今年度は定員の約6割の185人まで落ち込んだ。それに伴って財政状況も悪化し、昨年度は初めて7200万円の赤字決算となり、今年度予算で赤字は1億9500万円まで膨らんでいる。

さらに、もし来年度以降の入学者が定員の半分(162人)を割れば、年間1億5000万円程度受けている国の補助金も原則、打ち切られる。

県と市は「経営責任はすべて大学側にある」とする姿勢を変えていないが、議会で追及された「公設」の責任や関係者の不安を受け、今年7月24日、初めて大学側を含めた三者懇談会を開いた。竹内功・鳥取市長は「入学者を増やす意思と作戦が示されていない」と述べ、平井伸治知事は「もっと(県や市が支援している)公設民営のメリットを上手にPRできないのか」と話した。両トップが危機感を募らせているのは明らかだった。

8月8日には、県教育長や、県と市の担当部長らが参加する初のワーキンググループで学生確保の対策が話し合われた。同月20日からは3日間で、担当者が全県立高と私立高5校の計29校を回った。大学側は「子どもや保護者に大学の説明をする時間を下さい」と緊急の校内説明会の実施を求め、県と市はそれぞれ作成した環境大のパンフレットを渡し三者の連携をアピールした。

高校訪問では、学校長や進路担当者から率直な意見が次々に出された。県立鳥取湖陵高(鳥取市)の山内有明校長は担当者を前に「本気なのか。その説明で子どものハートをつかめるのか」と前のめりにまくしたてた。県立鳥取商業高(同)の田村純一校長は「出口となる就職に大きな関心がある」と話し、資格取得のための体制作りや支援を求めた。

定時・通信制の県立鳥取緑風高(同)では「地元にとどまりたい生徒がほとんどだが、環境大に通うには経済的援助が必要」として、年間100万〜130万円で高いとされる学費が入学のネックになっていることを指摘した。

ほかにも▽他大学との単位互換(現在、放送大学のみ)▽全国レベルの研究成果▽有名大学院への進学▽留学支援−−など「大学に求められるもの」について多様な意見が寄せられ、環境大の現在抱える課題が次第に浮き彫りになっていった。(つづく)