『中国新聞』社説 2007年10月25日付

教育再生会議 安倍色を受け継ぐのか


政府の教育再生会議が、年内の第三次報告取りまとめに向け、活動を再開した。現行の義務教育の「六・三」制の弾力化や小中一貫校の制度化、義務教育段階での飛び入学実施などの改革案について協議する。

「六・三」制の弾力化をめぐっては、二〇〇四年から文部科学相の諮問機関である中央教育審議会(中教審)で審議が続く。小・中学校で分かれている学習指導要領の問題などが障害になり、明確な方針が打ち出せないままになっている。

保護者の関心も高い問題である。全国各地で始まっている公立校の中高一貫教育など、時代の変化に呼応した取り組みを参考にする必要があろう。

昨年十一月、国の構造改革特区に認定された広島市は、「六・三」制を維持しながら、基礎学力の向上を目指し、特定の教科を義務教育の前期と後期に分ける「四・五」制の試行を続けている。こうした教育現場の具体的な取り組みに敏感であってほしい。

それにしても、安倍晋三前首相が就任間もない昨年十月、鳴り物入りで設置した再生会議の枠組みや今後の道筋はどうなるのか。

福田康夫首相は、おととい開かれた再生会議の総会に出席。「注目を集める会議と認識している。国民全体が関心を持っている話題であり、建設的な議論をしていただきたい」とあいさつした。

政権発足後、首相は憲法改正問題や集団的自衛権のあり方などをめぐり、戦前回帰志向が目立っていた安倍政権と一定の距離を置く発言を繰り返していた。再生会議のメンバーの中には、教育問題でどんな発言が飛び出すか、身構えていた人もいただろう。首相の無難な発言に、基本路線の踏襲を感じて安堵(あんど)した有識者がいたかもしれない。

総会では、道徳を「徳育」として教科化する方針があらためて確認された。いじめによる不登校や自殺が社会問題になって久しいだけに、人としてあるべき態度を学ぶことは大切だ。しかし、教育現場では「心の問題をどうやって点数化するのか」「国家主義的発想だ」などと、正規の教科になることへの危惧(きぐ)や反発の声が根強いのも事実だ。

福田首相は、教育問題で安倍色をどこまで残し、福田色をどうにじませるのか。教育再生会議の論議を迷走させないためにも、明確な指針を示してもらいたい。