『山陽新聞』社説 2007年10月25日付

教育再生会議 再始動も冷静な議論必要


政府の教育再生会議が福田内閣発足後、初めて開かれた。十二月の第三次報告に向け、小中学校の「六・三」制の見直しや義務教育段階での「飛び級」導入の是非などについて意見をまとめる。

再生会議は教育改革に意欲を示した安倍晋三前首相の肝いりで昨年秋に設置された。突然の首相交代で宙に浮いた形になっていたが、福田康夫首相の下で存続されることになった。

教育界は課題山積だが、とにかくもう少し落ち着いて議論してもらいたい。これまでは安倍前首相の改革熱意にあおられるように、ゆとり教育の見直しや競争原理導入など勇ましい提言が目立ったが、荒っぽさと危うさを感じた人も多いのではないか。

母乳育児の励行を盛り込んだ「子育て提言案」は批判を浴び、すぐ撤回した。児童・生徒が学校を選択できる教育バウチャー制度導入を検討していることについては、渡海紀三朗文部科学相が「面白そうだとかいう考え方だけではどうかと思う」と指摘するなど、再生会議の在り方を疑問視する声は根強い。

再始動した再生会議は週一回のペースで開かれる。学校教育法制定(一九四七年)以来の小中学校の「六・三」制見直しは、子どもの早熟化傾向を踏まえ「四・五」、「五・四」制への移行を検討する。このほか飛び級や九年制の小中一貫校、バウチャー制度、習熟度別授業の導入などの是非を協議する。

現在の教育体制を根底から変えるようなテーマが多い。思いつきのような改革なら再び見直しが迫られ、現場は混乱するばかりだ。報告期限にとらわれず、説得力のある現状分析を示して議論を進める必要がある。