『読売新聞』2007年10月10日付

教育再生会議 再スタート


10月中の再開が固まった政府の教育再生会議は、先導役が安倍前首相から福田首相に代わったことで、改革内容の軌道修正は避けられない見通しだ。

改革は続行 方向は不明

ただ、福田首相は、教育改革を続ける意向は示しているものの、どのような「福田カラー」の教育を目指すのか、明言していない。

踏 襲

「山谷補佐官を再任した意味は、福田内閣も教育再生に一生懸命取り組むことを表している。私自身、文相(文部科学相)を2回経験した者として全力で応援する」

町村官房長官は9日夕の記者会見でこう述べ、安倍前内閣でも教育担当を務めた山谷えり子首相補佐官の下、教育再生会議を「改革のエンジン」として引き続き活用する考えを強調した。

教育再生会議は「安倍カラー」の象徴的存在だった。だが、政権交代に伴い、一時は存続が危ぶまれた。自民党幹部の1人は、「安倍前首相が退陣表明直後、当時文科相だった伊吹さん(現・自民党幹事長)に『教育再生会議は何とか残してほしい』と電話で頼んだ」と明かす。前首相の要請も踏まえ、福田首相と伊吹氏らが協議し、会議の存続が決まったようだ。

山谷補佐官は今月に入り、渡海文部科学相や文教族議員を回り、同会議の議題調整を本格化させた。

変 質

第3次報告に向けた課題は「教員の資質向上」「6・3・3・4制の在り方」など多岐にわたる。中でも、最大の論点となりそうなのが、教育への競争原理導入の典型となる「教育バウチャー制度」だ。導入には文科省や私立学校側が抵抗しており、委員間でも賛否が分かれる。

自民党内では、「積み残しの課題は、もともと実現が難しい内容が多い」(文科相経験者)などと、冷ややかな反応が多い。山谷氏自身も「議題見直しも含めて検討したい」と語り、今後、会議の性格が大きく変質する可能性がある。

首相本人は、教育問題について安倍前首相ほどの思い入れはないようだ。官房長官時代を通じ、自分なりの政策提言を披歴したことはほとんどない。所信表明演説などでも、「家庭、地域、行政が一体となって教育再生に取り組む」といった説明があっただけだ。