『朝日新聞』2007年10月9日付

大学評価へ国際調査 基準づくり OECD検討


経済協力開発機構(OECD)が大学での学習成果を評価するための国際的な調査の検討に入った。順調に準備が進めば2011年から実施されるという。OECDが15歳を対象に00年に始めた国際学習到達度調査(PISA)は既に国際的な学力の指針となっており、「高等教育版PISA」は大学を評価する新基準になる可能性が高い。

専門家による検討会議は4月に米国、7月にフランスで開かれた。今月には韓国でより具体的な構想について詰める。

制度や進学率の違いが大きいため国ごとの比較は当面は困難で大学や学部ごとに評価した方が良いという点や、調査は学部課程の修了段階がふさわしいとの点で合意。調査する学力としては、(1)分析的推論力や批判的思考力など、専攻を問わず必要な能力(2)専門分野に特定される能力(3)責任感やリーダーシップなどの「対人能力」が挙げられている。

このうち専門分野では、国際的な標準が比較的はっきりしている経済学と工学をまずは対象とし、そのほかの社会科学や人文科学の分野にも将来広げることを検討することになった。

大学を評価する指標としては卒業生の数や教授陣の論文が引用された回数などが利用されているが、「学生に身についた能力」を測る「物差し」は事実上なかった。OECDは「大学版PISA」の導入によって、大学を選ぶ学生や大学自身に加え、高等教育政策の決定にも、より客観的なデータを提供できると考えている。OECDのアンドレア・シュライヒャー教育局指標分析課長は「各国政府が多額の資金を高等教育に支出しているにもかかわらず、その効果を測る手段は少ない」と話す。

10月の会議での検討を経て、早ければ来年初めにもあるOECDの教育関係閣僚会議に計画案が示される予定だ。日本から専門家会議に参加している本間政雄・立命館大副総長は「国によって大学の位置づけが異なり、入学者の立場や教える内容も大きく異なるなど問題点は多い。しかし、OECDは試行調査に向けて積極的だ」と話す。

文部科学省は現在、会議には直接関与していないが、「大学での学習評価、国際競争力はともに重要な問題。OECDの議論を注視したい」と話している.