『京都新聞』2007年9月18日付

自立した研究者育てます
京大医学研究科、大学院で


日本の医学、生命科学をリードする人材を育てるため、京都大医学研究科は17日までに、大学院(博士課程)で新たな共通教育プログラムを本年度内に始めることを決めた。与えられた課題をこなすだけの姿勢を改め、自らの力で壁を乗り越える研究者を育てる。

医学研究科は一昨年度から、大学院教育改革の一環として、研究室や基礎・臨床の壁を取り払い、細胞生物学や神経科学、アレルギー・免疫など12の分野別教育コースを日本で初めて導入し、研究者として必要な広い知識と視野の習得を図ってきた。

今回の共通教育プログラムは、それぞれの研究室内で伝えられてきた、研究者に不可欠な技能と姿勢を、すべての大学院生に教育するのが目的。医学部外や他大学からの入学も増え、体系的な医学・生命科学教育が求められていることも背景にあるという。

導入コース(1年)では、実験ノートの書き方やデータ管理、実験計画法などの基本的な技能のほか、生化学実験や遺伝子解析などの手法を原理から学び、実験で失敗しても新たな手法を自ら考えることができる知識を習得する。

さらに、本庶佑特任教授ら分野を代表する世界的な研究者から科学の歴史と潮流についてレクチャーを受け、未来を見据えた研究姿勢を学ぶ。発展コース(2年以降)では、英語論文作成や国際学会での発表、研究計画の申請書の書き方などを学び、世界で自立して研究できる基礎を固める。

大学院教育担当の陣上久人特任教授は「これまでは研究室の中で時間をかけて育ててきたが、大学院生は下働きのように与えられた課題をこなすだけの側面もあった。基礎研究や臨床でリーダーとなる研究者を育てる教育モデルを、京大から始めたい」と話している。