『毎日新聞』京都版2007年9月14日付

京都大:新研究組織を創設 物理、化学など融合分野−−来月1日発足


◇世界トップレベル研究拠点プログラム−−10年間

京都大は12日、文部科学省の事業「世界トップレベル研究拠点プログラム」に採択されたことを受け、概要を発表した。化学、物理、細胞生物学の研究者で構成する新しい研究組織「物理細胞統合システム拠点(iCeMS、アイセムス)」を創設し、胚(はい)性幹(ES)細胞などを応用した新医療の開発などに取り組む。拠点長には現・京大再生医科学研究所長の中辻憲夫教授が就任し、10月1日に発足する。

同プログラムは、日本が世界をリードできる分野で優秀な研究者を集める拠点づくりをする大学などに対し、文科省が資金を援助する。今年度初めて導入され、京大は3件応募しアイセムスのみ選ばれた。文科省から年5〜20億円が10年にわたり補助される。国内外から主任研究員20人が集まるほか博士号取得者ら若手研究員を採用し、将来的には約200人の研究者を擁する方針。

京大はこれまでノーベル化学、物理学賞で4人の受賞者を輩出したほか、ES細胞など再生医学分野でも高いレベルを誇っており、これらの強みを生かす。吉田本部構内(左京区吉田本町)に拠点を置き、英語を公用語として名実とも世界トップの研究所を目指す。

中辻教授は「細胞は化学や物理学の研究者から見ると大変複雑な働きができ、仕組みの解明や技術応用は日本がリーダーシップをとれる分野。世界の研究者が集まる“ハブ”機能を果たしたい」と話していた。【中野彩子】