『毎日新聞』愛知版2007年9月15日付

産学連携:名大とファミリーマートが連携 “コンビニ研究”の活用模索


名古屋大学がファミリーマートと連携し、本格的な“コンビニ研究”に乗り出している。国立大学とコンビニの産学連携は全国で初めて。そのユニークな取り組みについて、毎日新聞中部本社の報道センターで研修しているインターンシップの名大生が取材した。【石井英資(名大法学部3年)、関野尭(同2年)】

◇来客行動や商品の流れ講義に/新たなビジネスモデル作りに

研究の拠点となっているのは、名大東山キャンパス(名古屋市千種区)内に昨年7月オープンした「ファミリーマート名古屋大学店」。店舗内にはパソコン5台が設置され、学生や教員らは無料でインターネットを利用できる。また、プレゼン用のスクリーンを備えた最大7人収容の小部屋「マルチスタディルーム」(5平方メートル)もあり、ゼミや研究活動に使うことができる。

日中と夜間に店を取材したところ、パソコンの利用者は1時間に1〜2人程度。キャンパス内には大学のパソコンルームがあり、コンビニのパソコンを使う学生はそれほど多くないのが現状だ。

名大経済学部の高桑宗右ヱ門教授(生産管理)によると、大学側にとってコンビニと提携する最大のメリットは、店側から研究に役立ついろいろなデータの提供を受けられること。経済学部ではデータをもとに来店する客の行動パターンや、商品の生産から販売までの流れなどについて研究しており、データは講義でも活用されている。このほかゼミの学生が店でアルバイトとして働き、「生きた研究」を体験。来年度からはファミリーマートの社員を講師に招き、大学院生向けに講義を行うことも計画している。

一方、ファミリーマート側は研究成果を新たなビジネスモデル作りなどに役立てる方針。同社広報・IR部の新野貴史さんは「外部の専門家の視点から研究してもらうことで、ビジネスの革新につながると期待している」と話している。

ただし、何人かの学生に話を聞くと、産学連携について「聞いたことがない」という人や、知っていても具体的な内容まで分かる人はほとんどいなかった。高桑教授によると、コンビニ研究は経済以外の分野にも応用できる可能性があるという。その意義を学内に広めていくことが今後の課題といえそうだ。