『沖縄タイムス』2007年9月5日付

大学院大整備3圏設定/県、周辺計画を策定


県は四日までに、沖縄科学技術大学院大学の建設に伴う周辺整備基本計画を策定した。大学院大学がある恩納村谷茶地区を中心に、隣接する金武町、うるま市石川地区の一部を含む「キャンパスタウンエリア」内の核となる門前町、交通センター地区などの拠点整備事業をはじめ、居住空間や教育、医療施設、商業サービス、産業基盤などの整備方針を明記している。県は同計画を基に、周辺整備推進本部を設置し、具体的な事業の推進方法や仕組みづくりの検討作業に入る。

同計画は、大学院大学をはじめ、民間事業者や研究機関、地域住民と連携して周辺整備を推進するためのガイドライン。基本目標に、「研究開発・交流の基盤づくり」「研究・開発成果を生かす仕組みづくり」「科学技術を担う人づくり」を掲げている。

整備地区は「キャンパスタウンエリア」のほか、名護市や中南部都市圏の一部を含む「中心エリア」、県全体を網羅する「広域エリア」の三つに区分した。

大学院大学施設の二〇〇九年一部供用開始に向け、早期整備が必要な先導的プロジェクトとして、キャンパスタウンエリア内の核で大学院大学のゲート的機能を果たす「門前町地区」と、大学までの交通アクセスの利便性向上などを目指す「交通センター地区」を挙げた。

門前町地区は、居住・生活機能のほか、大学院大学関係者らが生活するための商業施設、観光客や地域住民の利用が可能なサービス空間などを整備する。

交通センター地区は、キャンパスタウンエリアにおける循環型交通システムの構築、沖縄自動車道と連結する交通結節点の形成などを目指す。

県は今後、民間資金活用による社会資本整備(PFI)などの民間主導、または官民連携による整備を進めるため、「門前町」「交通センター」「住宅」部門の専門部会を設置し、事業推進のスキームづくりに着手する。


[解説]
民間資本の導入カギ
緻密な推進作業不可欠


県が策定した沖縄科学技術大学院大学の周辺整備基本計画では、各種事業の整備において、PFI(民間資金活用による社会資本整備)などの民間主導、または、公民連携による推進を大前提としている。

今後、具体的な事業推進に向けて、仕組みづくりの検討に入るが、厳しい財政事情もあって、開発手法の選定には、緻密な作業が求められる。

県科学技術振興課は「ノウハウを持った専門家の意見を取り入れながら、より具体的な方法を探る」とする。

一方で、同計画は前年度にまとめた素案から県民のパブリックコメントなどを経て、今年六月に策定する予定だったが、関係部署間の調整などに時間を要し、二カ月ほど遅れた格好となった。

多岐にわたる整備事業を実効性あるものにするには、県の部局間における各施策・事業との整合性を図るとともに、密な意思疎通、関係市町村との協力が不可欠だ。民間活力をいかに導入するかの知恵出しも鍵を握る。

県幹部も「民間活力を使うには当然、収支面の課題もある。需要と供給のミスマッチがあってはいけない」と引き締める。

今年四月にはキャンパス造成工事がスタートした。二〇〇九年の一部供用開始、一二年の開学に向けて、着実に周辺整備を進めるには、県がリーダーシップを発揮するとともに、国や地域との積極的な連携作業が求められる。(政経部・赤嶺由紀子)