『朝日新聞』山形版 2007年9月4日付

山形大・結城新学長「改革負託受けた」


 ∞対立候補を副学長に

山形大学の新学長に就任した元文部科学次官の結城章夫氏(58)が3日、就任会見を開いた。学内投票で2位だったのに、その後の選考会議で学長に決まるという不透明な選考過程が、学内の批判にさらされた結城氏。会見で「外からの改革の必要性」を強調する一方、学長選の対立候補を起用するなどバランス重視の船出となった。

学長任期は9月1日からの4年間で、再任は2年まで。結城氏は「大学の限界を外からの改革で突破してほしいとの負託を受けたと感じる。 しがらみにとらわれず、社会常識に従って進めたい」と語った。取り組むべき課題に「意思決定のスピードアップと事務手続きの簡素化」を挙げ、数カ月以内に学内規則を一斉に見直す方針を明らかにした。

結城新体制の副学長は5人。そのひとり小山清人・前工学部長(58)は、7月の学長選では対立候補だった。職員を対象とする学内意向投票では23票差で小山氏が上回ったが、結城氏を強く推す仙道富士郎・前学長らの意向が働いたとされ、選考会議でひっくり返った。

これに対し、小山氏らが「選考過程が不透明で事実上、仙道前学長の後継指名だ」「中央省庁からの天下り人事」「大学自治を侵すもの」などと強く反発。「法的措置」にも言及して結城氏の学長就任を批判していた。

対立候補の起用に結城氏は「選挙は選挙で済んだこと。いい山形大学をつくっていくために力を合わせていく」。小山氏も「意思決定を迅速化してその分、教育をレベルアップするという学長と私の考えは100%同じ」と応じた。

他大学でも訴訟に持ち込んだ例があるが、一審で敗訴するなど苦戦していることから、小山氏は法的措置を取っても勝訴する確率が低いとして「山大を混乱させるだけ」と判断。「組織の中で学長選の禍根を少しずつ減らしていく」と副学長就任の依頼を受けたという。ただ、仙道前学長に対しては「考え方が違った。まだ冷静になれない部分もある」と話し、禍根の深さをのぞかせた。

仙道前学長は8月29日の退任会見で、小山氏らの批判について「法律にのっとってきちんと学長選考がなされたのであり、大学の自由を侵すものでは決してない」と反論していた。