『読売新聞』2007年8月31日付

国立大、学外者経営に存在感 教職員と意識差、摩擦も


法人化された国立大学で、学外出身者の経営参画が目立ってきた。大学の閉鎖的な体質に風穴を開ける一方で、教職員との間で摩擦も生じている。社会に開かれた経営の在り方を巡って模索が続きそうだ。

国立大学法人法では、大学に対し、経営上の重要事項を審議する「経営協議会委員」、学長を補佐して経営に直接あたる「理事」、業務を監査する「監事」に、必ず学外出身者を入れることを義務付けている。社会に開かれた大学の実現という理念に基づいている。

本間政雄・国立大学マネジメント研究会長(立命館副総長)らの研究グループが、昨秋に実施した調査によると、87大学に経営協議会委員が677人、理事が131人、監事174人が学外から就任していた。

常勤の理事は文部科学省を主とした官庁出身者が多いが、非常勤を含めた三つの職全体では、民間企業、法曹、他大学出身者など多岐にわたっていた。監事には公認会計士や税理士ら民間の専門家も多かった。

研究グループが、これら三つの職に就く学外出身者にアンケートをとったところ、経営協議会委員286人、理事64人、監事123人から回答を得た。

それによると、仕事への満足度は、総じて高めだったが、「教職員のほとんどに、法人になったことの意識が薄く、大学の諸施策に無関心、非協力」と、学内の危機感の低さを指摘する意見が出た。「やたら会議が多く、長く、結論が出ず、経営にスピードがない」「民間企業的発想で発言すると、議論がかみ合わないことが多い」「監事制度の位置づけが学内でほとんど理解されていない」などの不満も多かった。

さらに、「不要業務の洗い出し、効率化に一層の努力が望まれる」「学長のリーダーシップを発揮しやすいようにする」などの意見や、「教員との話し合いの場が少ないので不安がある。パイプはあったほうがよい」といった要望もあった。

他方で、学内出身の理事や学長らに「学外出身者を活用できていると思うか」と尋ねた質問では、肯定的な回答が、三つの職いずれについてもほぼ9割以上に達していた。

こうした学外出身者との意識差は、7月の山形大学長選出でも表面化した。教職員投票では、文部科学省の次官だった結城章夫氏の獲得票数は2位にとどまったが、学外者がメンバーの半数を占める学長選考会議は、結城氏を新学長に選んだ。この決定に対し、教員の中から反発の声が上がっている。

旧文部省の総務審議官や京都大副学長も務めた本間会長は「国立大はまだ、学外者と教職員が反発し合っている段階。お互いの不満を出し合い、理解を深めていくことが必要だ」と話している。(石塚公康)