『埼玉新聞』2007年8月29日付

県の産学連携技術開発支援 画像復元など2件選定 商品化へ経費の半額補助


県は県内企業と大学との産学連携による新技術や新製品の開発を支援する「大学シーズ事業化支援事業」の二〇〇七年度の補助金交付先を決定した。ぶれた写真を復元するシステム開発と、レンズなどの光学材料を高能率で研磨するシステム開発をテーマにした二件を選定。研究開発にかかる経費の半額(最高で年四百万円)を補助する。いずれも商品化の実現に向け、今後の研究成果が注目される。

企業で選ばれたのは半導体検査装置の開発などを手掛ける「ライトロン」(さいたま市)と、光学部品などを加工販売する「タナカ技研」(小鹿野町)。

ライトロンは、慶應義塾大の齋藤英雄教授、電気通信大の西一樹准教授と共同で「ぶれ画像復元アルゴリズムとその応用装置の開発」をテーマに研究。写真などのぶれを復元するシステムで、画像がどのようなぶれたかという軌跡を求め、劣化した画像を鮮明なものに復元する。完成すれば監視カメラや、半導体の検査装置などの幅広い市場に適用できるという。

タナカ技研は、埼玉大の池野順一准教授と共同で研究。テーマは「先端光学材料を対象とした新しい研磨システムの試作開発」と題し、高能率で鏡面加工が可能な「EPD砥石」の開発に取り組んでいる。EPD砥石の使用により、工程数を従来の十分の一に短縮でき、きれいに磨けるほか、廃液を出さないため環境にもやさしいという。

同補助金制度は二〇〇三年度からスタート。今回を含めてこれまで三十七件の応募があり、十一件を採択した。研究成果は今年六月現在で、商品化・実用化段階二件、試験品段階五件、特許出願四件に至っている。

今回は昨年の八件を大きく上回る十四件の応募があった。県産業労働部工業支援課は「最近は銀行なども産学連携に力を入れており、企業と大学がマッチングする土壌ができてきた。今後もレベルの高い研究テーマが多数出てくるのでは」と期待を寄せている。