『朝雲』2007年7月5日付

宇宙戦略 確立目指す
額賀長官ら有志議員 「基本法案」を提出


わが国宇宙開発の基本理念や宇宙基本計画の策定などを定めた「宇宙基本法案」が6月20日、衆院に提出された。額賀福志郎元防衛庁長官を代表とする有志議員12人による議員提案で、額賀氏をはじめ自民党の河井克行国防部会長らが長年の研究成果を法案としてまとめた。法案は1章「総則」から5章「宇宙活動に関する法制の整備」までの全35条と附則からなっている。

法案の骨子は、目的として、科学技術の進展など内外の諸情勢の変化に伴い、宇宙の開発、利用の重要性が増大していることに照らし、わが国の宇宙開発の果たす役割を拡大するため、基本となる事項を定めるとともに、国に宇宙戦略本部を設け、宇宙開発に関する施策を総合的、計画的に推進して国民生活の向上と経済社会の発展に寄与する、としている。

基本理念では、宇宙の平和利用について、宇宙に関する条約や国際約束に従い、日本国憲法の平和主義の理念に則って行われると規定。その上で、国民生活の向上や災害、貧困その他人間の生存、生活に対する様々な脅威の除去、国際社会の平和および安全の確保、わが国の安全保障に資するように行われなければならないとしている。

基本的施策として、人工衛星を利用した安定的な情報通信ネットワーク、観測に関する情報システム、測位に関する情報システム等の整備と推進をはじめ、国際社会の平和と安全、わが国の安全保障に資する宇宙開発の推進に必要な施策を講じることや、打ち上げ射場、試験研究設備などの整備、研究開発の成果の事業者への移転の促進、投資を容易にするための税制、金融上の措置などを挙げている。

さらに、宇宙開発に関する施策を総合的、計画的に推進するための宇宙戦略本部を内閣に設置。宇宙基本計画の策定や施策の推進、総合調整などを所掌。本部長は首相、副本部長に官房長官、宇宙開発担当相、本部員にはその他の国務大臣を充てる、としている。

政府による宇宙物体の打ち上げの許可、登録、管理、宇宙物体に起因する損害賠償など宇宙活動に関連する法制の整備をはじめ、独立行政法人の宇宙航空研究開発機構(JAXA)の組織の見直しなども盛り込んでいる。

法案提出代表者の額賀福志郎元防衛庁長官は「宇宙の開発・利用は国家戦略として従来の放送、通信、気象情報からカーナビに至るまでの国民に対するサービスはもとより、国民の安全、安心を図るため、安全保障の視点からも総合的な対応策を考えていかなければならない」と話している。