『読売新聞』2007年8月18日付

優れた学生呼び込め、東大がIT急成長のインドに事務所


情報技術(IT)分野で急成長を続けるインドから優れた学生を獲得しようと、東京大学がインド進出に乗り出すことになった。

現地に職員を常駐させる「インドオフィス」を来年開設するほか、インド工科大などIT分野で世界有数の大学との提携を目指し、学術交流を深める。東大はここ数年、世界大学ランキングで欧米の大学に水をあけられているだけに、欧米に流れるインドの優秀な人材と技術を呼び込み、浮上の足がかりにしたい考えだ。

東大は2006年5月現在、アメリカ、中国など32か国96大学と交流協定を締結しているが、インドとは、デリー大と文学部が協定を結んでいるだけで、IT分野での交流はない。昨年のインドからの留学生も10人のみで、中国(679人)や韓国(502人)に比べ少なかった。

東大はまず今月下旬、ニューデリーの公的研究機関の一室に活動拠点を開設。インド国内の大学について情報収集を進め、来年までに複数の大学と提携を結ぶ予定だ。その上で、提携先のいずれかの大学内にインドオフィスを構え、常駐する職員が留学の情報提供や事前相談を行うほか、留学生の試験会場に活用することも想定している。

インドのIT産業は1990年代後半から急成長を遂げ、2005年3月までの5年間に市場規模を約3倍の280億ドルに拡大させた。情報工学系の大学で学ぶ学生数は日本の10倍以上にのぼる。一方、インドの大学は、歴史的に関係の深いイギリスやIT分野の研究が盛んなアメリカの大学と活発な学術交流を行っており、優秀な学生の大半がこうした国々に流れているのが実情だった。

東大は、英ザ・タイムズ紙の世界大学ランキングで「国際化」の遅れが指摘され、04年の12位から05年は16位、06年は19位と年々順位を落とし、欧米の有名大学の下位に甘んじている。アジアの中でも05年、北京大にトップの座を譲った。東大は「人材豊富なインドから優秀な留学生を積極的に受け入れ、共同研究の実績も積み重ねることで、世界トップの大学を目指したい」と話している。

日本の大学の国際競争力が低いことは、これまでも各方面からたびたび指摘されており、「経済財政改革の基本方針(骨太の方針)2007」も、大学の留学生政策や海外現地機能の強化に、国家戦略として取り組むよう提言している。文部科学省も今月21日、ニューデリーで初の日印学長会議を開催し、インドとの交流を後押しする。

東大は、日本とインドとの交流を活発化させるため、拠点を持たない日本の他の大学に、インドオフィスを活用してもらうことも検討していくという。