『北海道新聞』2007年8月3日付

道内国立大の08年度入試 「学生確保」道外へ攻勢 受験者減少に備え


道内の国立大に、道外の大都市でも入学試験を行う動きが広がっている。二○○八年度入試から道教大が宮城教育大のおひざ元、仙台で行うほか、小樽商大も十年ぶりに東京で実施する。少子化の影響で、大学の総定員と志願者数がほぼ同じになる「大学全入時代」に入り、国立大学法人化による経営の厳しさにもさらされる各大学が、優秀な学生を求め本州へ「攻め」に出ている。

道内の国立七大学のうち○八年度入試で道外に試験会場を設けるのは四大学。道教大と小樽商大のほか、○七年度入試から仙台会場を設置した室工大は来春から名古屋でも行う。北見工大は前年度に続き大阪で行う。

“道外進出”について道教大は「優秀な教師を輩出し続けるためには、優秀な学生を確保するしかない。三人よりも五人から、一人の合格者を選びたい」と強調する。

同大によると、○七年度入試の総志願者数約四千八百人のうち東北地方の学生が14%を占めた。道内まで来なくても受験できる環境を整えて志願者を増やし、「今後の受験者減に備える」(同大入試課)思惑だ。「本丸」に踏み込まれる形の宮城教大は「ある程度学生を持っていかれる覚悟をしなければ」と危機感を募らせる。

国立大は○四年の独立行政法人化により、学生や職員の数に応じて配分される運営交付金の削減が続いており、研究成果に応じて配分される科学研究費補助金などの獲得が経営を安定させる鍵を握る。優秀な学生集めはその基本となる。

法人化により、入試予算の制限が緩和されたことも背景にある。北見工大は、大阪会場設置に職員派遣費など数百万円をかけるが「国立大と言えど、今や学生はお客さま。いかに入学しやすいサービスができるかが問われる」(入試課)。室工大は七月、名古屋会場設置を周知するため、愛知県などの高校五百校に入試要項を郵送した。

東京での入試を一九九八年まで十一年間行ったが、大きな効果を得られずに休止した小樽商大は「本州に大学の特色をPRするための再挑戦」と意気込む。

一方、日本私立大学協会道支部事務局の北海学園大によると、北海学園大が二十年ほど前から東京で試験を行うなど、道内私立大の大半は既に道外で試験を実施。また、道外の大学も国立の弘前大や私立の法政大、明治大などが札幌で入試を実施しており、駿台予備学校札幌校は「学生の奪い合いが地域の枠を超え過熱している」と指摘している。