山形大学長選挙転覆問題関連報道

山形大学長に結城前次官 教職員投票から一転 『河北新報』2007年7月26日付
山形大学:新学長に前文部科学事務次官の結城氏 『毎日新聞』2007年7月26日付
山形大学長に前文科次官の結城氏、中央省庁次官経験者で初 『読売新聞』2007年7月26日付
元文部科学次官・結城氏、山形大学長に 他候補は反発も 『朝日新聞』2007年7月26日付
山形大学長に前文科次官 学内投票結果覆して選出 『西日本新聞』2007年7月26日付
山形大:学長選 新学長に結城氏 投票では2番目…選考会議が逆転選出 『毎日新聞』2007年7月27日付
山形大学長に前文科次官・教職員投票を覆し選出 『日本経済新聞』2007年7月27日付
山形大学長に前文科次官 「改革」「天下り」紛糾 『産経新聞』2007年7月29日付

『河北新報』2007年7月26日付

山形大学長に結城前次官 教職員投票から一転


任期満了に伴う山形大の新学長を決める学長選考会議が26日、開かれ、山形県村山市出身で前文部科学事務次官の結城章夫氏(58)が選ばれた。結城氏は教職員を対象にした意向聴取(投票)では2位だったが、選考会議はあえて1位候補を退ける判断を示した。任期は9月1日から4年間。

記者会見した結城氏は「外部からの視点で、山形大の改革に取り組みたい。これまでの知識と経験を生かし、郷里の発展に尽くしたい」と述べ、教養教育に重点的に取り組む考えを強調した。

結城氏は山形東高、東大卒。1971年に旧科学技術庁に入り、文科省官房長を経て2003年、文部科学審議官。05年1月から事務次官を務め、学長選に立候補するため今月6日に退職した。

学長選は今月10日に公示され、結城氏、工学部長の小山清人氏(58)、元理学部長の加藤静吾氏(62)、農学部長の中島勇喜氏(63)の計4人が立候補。結城氏以外の3候補は公示後、「結城氏が学長に就任すれば、実質的な天下りになる」などとして、小山氏支持で一本化を図った。

25日の教職員約800人による意向聴取で、378票の小山氏、355票の結城氏、56票の加藤氏の上位3人に絞られた。学長選考会議の14人のメンバーが26日、投票を行った結果、過半数の10票を獲得した結城氏が最終的に選ばれた。

同会議の坪井昭三議長は結城氏を選考した理由について「山形大をどうやって特徴ある大学にしていくか、はっきりと説明した点が評価された」と話した。一方、落選した小山氏と加藤氏らは記者会見し、「選考手続きに問題がある」として、学長選考会議に対し、教職員を対象にした説明会を開催するよう求める声明文を発表した。

◎「学内融和」ハードルに

【解説】山形大の新学長に前文部科学事務次官の結城章夫氏が選ばれた背景には、国立大が2004年に法人化され、特に地方大学が「冬の時代」を迎えていることがある。

国立大では国から配分される運営費交付金が毎年減らされている上、山形大の場合、志願者が07年度まで4年連続で減少。同大は「入試緊急対策本部」を設置して、志願者増を図るなど必死の取り組みを進めている。

「大学淘汰(とうた)」の傾向が強まる中、仙道富士郎現学長や医学部が白羽の矢を立てたのが、大学運営の監督官庁である文科省の官僚トップ、結城氏だった。「新しい発想で大学運営に取り組める人物」として、初めて学外に人材を求めたが、学内からは逆に「天下り」批判を招くことになり、「結城派対反結城派」の対決構図が鮮明になった。

意向聴取では、小山氏が結城氏を23票上回ったが、学長選考会議が出した結論は結城氏だった。教職員の投票結果が学長選考会議で覆るケースは新潟大、滋賀医科大でもあり、それぞれ落選候補側が提訴する事態になっている。

山形大でも、落選候補側が法的手段も辞さない構えを示している。学長選の亀裂をどう修復するのか、新学長には強いリーダーシップを発揮する前に「学内融和」というハードルが立ちはだかる。
(山形総局・跡部裕史)

『毎日新聞』2007年7月26日付

山形大学:新学長に前文部科学事務次官の結城氏


山形大学の新学長に、前文部科学事務次官の結城章夫氏(58)の就任が26日決まった。教職員らの投票では2番目の得票だったが、学長選考会議が逆転で結城氏を選出した。事務次官経験者が退任直後に国立大学法人の学長に就任するのは異例で、学内からは「中央からの天下り人事だ」と批判の声が出ている。

結城氏は山形県村山市出身。同大の仙道富士郎学長から就任の打診を受けて7月に退職し、10日公示の学長選に立候補した。25日の投票では4候補のうち小山清人工学部長378票、結城氏355票、加藤静吾前理学部長56票の順だったが、26日に学部長や学外委員など14人で構成する選考会議は、上位3人からの選考で結城氏を選んだ。任期は9月1日から4年間。

選考会議の坪井昭三議長は「結城氏が特徴ある大学に持っていけると、はっきりと表明した点を評価した」と説明。会見した結城氏は批判について「問題なのは予算権限で役所が(天下りを)押し付けることだが、国立大学法人は大学自体が学長を選んでいる。世の中の天下りにはあたらない」と述べた。

小山氏、加藤氏は同日、連名で「投票結果は大学構成員が天下りに拒否の審判を下したことを示している。このまま学長を決定するなら、法的措置を考えなければならない」との声明文を発表した。

国立大の学長は近年、学内選挙で2位の人が選ばれるケースが出て、滋賀医科大で05年、新潟大で06年に訴訟が起こされている。【釣田祐喜】

『読売新聞』2007年7月26日付

山形大学長に前文科次官の結城氏、中央省庁次官経験者で初


山形大は26日、国立大学法人法に基づく学長選考会議を開き、新学長に前文部科学次官の結城章夫氏(58)を選出した。

文科省によると、中央省庁の次官経験者が国立大の学長に就任するのは初めて。

任期は9月1日から4年間。

学長選には、山形県村山市出身の結城氏や、小山清人・工学部長ら4人が立候補。25日に教職員809人が行った投票では小山氏が1位、結城氏が2位で、同会議は上位3人の中から結城氏を選んだ。同会議議長の坪井昭三・元学長は「結城氏の視野の広さが評価された。得票差も大きくはなかった」と説明した。

小山氏らは決定に抗議し、撤回を求める声明を発表した。

『朝日新聞』2007年7月26日付

元文部科学次官・結城氏、山形大学長に 他候補は反発も


山形大学は26日、学長選考会議を開き、次期学長に今月初めまで文部科学事務次官だった結城章夫氏(58)を選んだ。前日行われた、教職員投票による「学内意向聴取」では、候補者4人中、結城氏は355票で、小山清人工学部長(58)の378票に次ぐ2位だった。だが、学内外の委員で構成する選考会議が上位3人に絞って投票した結果、結城氏10票、小山氏4票と逆転した。

結城氏とともに記者会見した選考会議議長の坪井昭三・山形先端医療研究所会長は、得票数が少なかった結城氏を選んだ理由について「視点が非常に広く、どうしたら山形大を特徴ある大学にできるのかということをはっきり表明した点がかわれたと思う」と述べた。

一方、小山氏と、同じく候補者だった加藤静吾元副学長(62)の2人は連名で「決定は山形大の将来に大きな禍根を残す」とする声明文を発表。「(教職員の得票では1位でなかったという)客観的な事実を認め、就任要請を辞退すべきだった」と述べ、結城氏がこのまま就任する場合は法的措置も検討することを明らかにした。

『西日本新聞』2007年7月26日付

山形大学長に前文科次官 学内投票結果覆して選出


山形大は26日、仙道富士郎学長の任期満了に伴う次期学長選考会議を開き、前文部科学事務次官の結城章夫氏(58)を選出した。任期は9月から4年間。

官僚トップである次官経験者が国立大学長に転身するのは極めて異例。4人が立候補し、結城氏は7月に次官を退任したばかりで「天下り」との批判も出た。25日に実施された教職員の投票で結城氏は2位にとどまったが、学内外の委員による選考会議で最終的に“逆転”した。

法人化や大学全入時代により地方国立大が厳しい状況に直面する中で、次官経験者にかじ取りを期待したとみられる。しかし、投票で1位だった小山清人工学部長(58)らは反発している。

「学内意向聴取」と呼ばれる教職員の投票では結城氏以外の候補者3人が小山氏に事実上1本化し、投票総数809票に対し、小山氏378票、結城氏355票の接戦だった。

『毎日新聞』2007年7月27日付

山形大:学長選 新学長に結城氏 投票では2番目…選考会議が逆転選出


◇前文科次官に「天下り」批判も

山形大学の新学長に、前文部科学事務次官の結城章夫氏(58)の就任が26日決まった。教職員らの投票では2番目の得票だったが、学長選考会議が逆転で結城氏を選出した。事務次官経験者が退任直後に国立大学法人の学長に就任するのは異例で、学内からは「中央からの天下り人事だ」と批判の声が出ている。

結城氏は山形県村山市出身。同大の仙道富士郎学長から就任の打診を受けて7月に退職し、10日公示の学長選に立候補した。25日の投票では4候補のうち小山清人工学部長378票、結城氏355票、加藤静吾前理学部長56票の順だったが、26日に学部長や学外委員など14人で構成する選考会議は、上位3人からの選考で結城氏を選んだ。任期は9月1日から4年間。

選考会議の坪井昭三議長は「結城氏が特徴ある大学に持っていけると表明した点を評価した」と説明。結城氏は「問題なのは予算権限で役所が(天下りを)押し付けることだが、国立大学法人は大学自体が学長を選んでいる」と述べた。

小山氏、加藤氏は同日、「投票結果は大学構成員が天下りに拒否の審判を下したことを示している。このまま学長を決定するなら、法的措置を考えなければならない」との声明文を発表した。国立大の学長は近年、滋賀医科大で05年、新潟大で06年に訴訟が起こされている。【釣田祐喜】

『日本経済新聞』2007年7月27日付

山形大学長に前文科次官・教職員投票を覆し選出


山形大は26日、仙道富士郎学長の任期満了に伴う次期学長選考会議を開き、前文部科学事務次官の結城章夫氏(58)を選出した。任期は9月から4年間。

官僚トップである次官経験者が国立大学長に転身するのは極めて異例。結城氏は7月に次官を退任したばかりで「天下り」の批判も出た。25日に実施された教職員の投票で結城氏は2位にとどまったが、学内外の委員による選考会議で選出された。

法人化や大学全入時代により地方国立大が厳しい状況に直面する中で、次官経験者にかじ取りを期待したとみられるが、投票で1位だった小山清人工学部長(58)らは反発している。

結城氏は山形県村山市出身で東大工学部卒。1971年に旧科学技術庁に入り、2005年に旧科技庁出身では初めて文科事務次官に就いた。

「学内意向聴取」と呼ばれる教職員の投票では結城氏以外の候補者3人が小山氏に事実上一本化し、投票総数809票に対し、小山氏378票、結城氏355票の接戦だった。〔共同〕
『産経新聞』2007年7月29日付

山形大学長に前文科次官 「改革」「天下り」紛糾


■地方の国立大かじ取り厳しく

山形大学は仙道富士郎学長の任期満了に伴う学長選考会議で前文部科学事務次官の結城章夫氏(58)を選出した。文科次官から学長へ、異例の転身を果たした結城氏に改革の期待が寄せられる一方、先立って行われた教職員による投票は2位にとどまったため、「天下り」と反発も出ている。“大物学長”誕生の背景には地方国立大の厳しい現状もあり、厳しいかじ取りを強いられそうだ。

同大の学長選には4人が出馬。教職員らの投票では、小山清人工学部長(58)が378票を得てトップ、結城氏は355票で2位だった。

だが、学内外の委員による学長選考会議では、14人中結城氏に10票が集まり、教職員の意向を覆した。

従来、大学は教授会の権限が強く「象牙の塔」と組織の硬直化が批判されていた。

平成16年の国立大学法人化で、学長を、学内外の委員による選考会議で選出するよう法律で規定。経営・管理能力に秀でた外部人材の参画を可能にした。山形大では教授会が2人まで推薦できる「選挙」結果を基に選考会議が決定するとしている。

山形県出身の結城氏は文科次官の退職を前に、医学部教授会などから次期学長選への出馬を打診された。

現職次官が“ヘッドハンティング”された背景には、地方国立大の運営の厳しさがある。財政難を理由に運営費交付金が毎年1%ずつ削減されている上に、山形大は志願者減による受験料収入も減少している。医学部の付属病院は収入を毎年2%ずつ増やすよう国から求められている。生き残りをかけ「改革待ったなし」だ。

このため、医学部教授会は“外部の血”を導入して改革を進めようと、白羽の矢を結城氏に立てた。

政府の教育再生会議の第2次報告でも「学長選考会議による実質的な決定を行うこととする」として、大学執行部が実行力あるリーダーをトップダウンで選ぶことを求めている。

                   ◇

選考会議後に開かれた記者会見。30年間以上、山形大に奉職してきた小山工学部長は「学長選考は教育研究に携わる者の投票結果が尊重されてきた。選考会議の決定は本学の伝統の否定だ。将来に大きな禍根を残す」との声明文を発表。「結城氏は事実上の天下りだ。学問の自由や大学自治が損なわれる」として裁判も辞さない構えだ。

一方、結城氏は「得意分野である事務作業の効率化を進めたい。国立大は学生のためにある。学外からの改革で内部改革の限界を突破したい」と宣言。天下り批判には「文科省が予算や権限を背景に押し込んだ経緯はなく、天下りには当たらない」と切り返した。

「地方の国立大は生え抜き重視の風土が色濃く残っている。大学以降は東京にいた“外様”に対する視線は冷たい」(文科省関係者)との見方もあり、結城氏にとって、今後の大学運営は一筋縄ではいかなそうだ。