『西日本新聞』2007年8月1日付

産学連携の自動車関連企業 「つくし金型」解散 直方市の工業団地 進出から10カ月

解散した直方市上新入の「つくし金型製造」

九州工業大情報工学部(飯塚市)との産学連携で起業し、直方市上新入の明神池工業団地に進出していた自動車部品金型メーカー「つくし金型製造」が、開業からわずか10カ月で6月末に解散していたことが31日、分かった。同社の親会社で金型設計・製造支援システム開発・販売大手「グラフィックプロダクツ」(本社東京、資本金8億8450万円)の経営形態が変更されたため。企業立地奨励金など行政からの優遇措置はまだ適用されていなかったものの、産学連携の自動車関連企業は珍しく、地元の期待が大きかっただけに、波紋が広がっている。

グ社は、跡地用地と施設を有効利用する企業に売却する方針で、数社が進出の動きを見せているという。同市の小林康雄商工観光課長は「将来性があり、最先端の金型製造の技術を有する会社で、地場企業の先導役になってもらえると期待していただけに解散は残念」としながらも、「後継企業の進出も具体化しており、市経済への影響は少ない」と分析している。

つくし金型は、北部九州に自動車産業の集積が進んでいることを受け、2005年5月、グ社が全額出資の子会社として、九工大情報工学部内に設立した。自動車や半導体メーカー側からの高度な金型技術へのニーズに対応する狙いだった。同学部の「先端金型センター」所長(教授)を取締役に迎えて九工大との産学連携を強化し、昨年2月に県、直方市と新工場の立地協定を締結。約1ヘクタールの工場用地を取得し、同9月から自動車部品やデジタルカメラなどの金型を生産していた。

しかし、グ社が大手金型設計・製造グループの傘下に入ったことで状況が一変。グループ内には既に金型メーカーがあり、グ社が独自で金型会社を維持する必要性がなくなり解散を決めたという。直方市には5月下旬、グ社から解散するとの報告があった。社員15人の大半は再就職先が決まっているという。