『読売新聞』社説 2007年7月27日付

教職大学院 質の高い教員の輩出を期待する


「職人」「プロ」と呼べる教員の養成を、教職大学院には期待したい。

指導力低下が言われ、理不尽な「クレーム親」への対応なども教員に求められている昨今、そうした教員の輩出は、教育現場の「再生」にもつながるだろう。

来年度からスタートする教職大学院に、国立15、私立6の計21大学が名乗りを上げた。4年前、同じ専門職大学院の法科大学院に72大学の設置申請があったのに比べ、少なめではある。初年度は模様眺め、という大学が多いようだ。

教職大学院は、中央教育審議会が昨年7月の答申で、教員の資質・能力向上策の一つとして、教員免許更新制などとともに提言した。更新制は2009年度から実施されることが決まった。

目的は、学部卒業生の中から、より実践的な指導力を身につけた新人教員を養成することと、現職教員の中からスクールリーダー(中核的中堅教員)を育てることにある。研究者養成や特定教科の専門性を高めることを目的とした従来の大学院とは違う。

設置条件は厳しい。学生が数十人規模の大学院でも、最低11人の専任教員が必要で、うち4割は校長や指導主事などの実務を経験した教員でなければならない。その負担や採算面を考え、教職大学院の開設を見送った大学もある。

学生にも現状の2倍、400時間以上の教育実習が義務づけられる。模擬授業や授業観察・分析、生徒指導や教育相談のやり方など、徹底して実践重視の教育が行われる。

課題は、どれだけ多くの優秀な学生を大学院に集められるか、だろう。

団塊世代の退職に伴う大量採用時代を迎え、新人教員採用のハードルは都市部を中心に低くなっている。学部の教職課程修了者にも、採用の門戸は広い。

2年間、学費を払って教職大学院で学ぶ以上、修了生に採用や給与面で何らかの優遇を求める意見は中教審でも多く出ていた。すでに複数の教育委員会で、特別採用枠などの検討を始めているというが、募集開始の段階できちんと示す必要があるのではないか。

現職教員については、まだ修了後の処遇上の利点などは不明だ。

教職大学院の運営を支えていくのは、教員を採用する教育委員会である。

教育実習の受け入れ先確保には教委の協力が必要だ。教委から専任教員を招いたり、教育内容について指導を受けたりしている大学も多くある。

質の高い教員を育てるには、教職大学院と教委との緊密な連携が大事だ。