『毎日新聞』2007年7月25日付

キャンパスNOW:TOPICS 京大に産官学連携本部 牧野教授に聞く
◇共同研究促進へ組織一元化
◇「5年以内に2、3倍の規模にしたい」


京都大は今月、国内外の産官学連携による共同研究などを積極的に進めるための全学的な組織「産官学連携本部」(本部長・松本紘副学長)を発足させた。これまでの活動を一元化し、知的財産の確保や活用、ベンチャーの育成、支援にも取り組む狙いだ。中心的な役割を果たす同連携センター長、牧野圭祐教授に今後の活動計画や抱負を聞いた。

−−産官学連携の一元化の計画は随分と遅れたようですが。

そうです。大学という組織の動きは鈍く、やっと進めることができました。産官学連携の促進は国立大学法人化前後から始まり、05年4月には国際イノベーション機構が設立され、国際融合創造センターなどの関連組織とともに共同研究などで成果を上げてきました。今回、それらの組織を一元化し、内外に対する透明性や説明責任を明確にしていきます。

−−活動方針は。

三つの柱があります。一つは産官学連携による共同研究を進め、京大の研究成果の効果的な社会還元に努めること。二つ目は研究活動から生じた知的財産の適切な確保と活用を図ること。三つ目は創造性、起業精神に富む人材の育成をはじめ、ベンチャーの育成ノウハウの開発、支援をすることです。

−−京大ならではの特徴は。

大学研究者の研究成果(特許など)を民間企業などへ技術移転する機関(TLO)やインキュベーション(新事業創出支援)施設、ベンチャーファンドなど外部機関とより密接な連携を取ることです。

−−具体的には。

これまでの連携組織には専任教員はいなかったが、このセンターには専任7人と特任、客員を含めて約15人の教員を配置します。またセンター内に寄付研究部門を設け、世界有数のコンサルタント会社出身の教授を招く。世界の動きに対応した厚みのある連携組織を作りあげます。

−−各大学は外部資金の獲得に知恵を絞っていますが。

国からの運営交付金は減少の一途をたどり、それは大きな課題です。特に付属病院が深刻です。各部局などへの寄付に加え、卒業生や企業などから広く寄付金を集める「京大基金」が開設されたとはいえ、京大の規模と実力からいえば、まだまだ少なすぎる。京大では、大手メーカーや製薬企業などと10年がかりの大型共同研究を獲得している。今後5年以内に共同研究を2、3倍に増やしたい。

−−知的財産の戦略はどうか。

京大が100年以上にわたって築き上げてきた知的財産は膨大なものだ。京大発のベンチャーは約70社できているが、まだ上場できるまでの会社には育っていない。東京にも京大のオフィスを構えており、今後、世界戦略を描きながら京大の力を発揮させていきたい。【池田知隆、撮影も】