『河北新報』2007年7月12日付

東北大に医工学研究科 来年度、融合分野で人材育成


東北大は2008年度、大学院に「医工学研究科」を新設する。医学と工学の融合分野で研究者や技術者を養成する大学院は、国内で初めて。同時に開設する医工学研究センターと、東北大病院に設ける「未来医工学治療開発センター」の3本柱で、医工連携の研究教育拠点づくりを進める。

研究科には、新たな医用計測・診断方法の開発と臨床応用に取り組む「計測・診断医工学」、工学技術を駆使して生体の再生を図る「生体再生医工学」、社会医療システムの改革を目指す「社会医工学」など10講座を設ける。

定員は前期(修士)課程が31人、後期(博士)課程は10人程度。前期は保健、生物、薬学、農学系と理工学系の学部卒業者、後期は医学、歯学、薬学系の学部卒業者や理工系大学院の前期課程修了者の入学を見込む。

専任教員は循環器内科や脳神経外科、スポーツ工学、機械工学、電気工学などの教授と准教授35人。医工学の修士、博士の学位が取得可能で、進路は研究者や教育者、医療機器開発の技術者を想定している。

縦割り意識の強い国内の大学は、欧米に比べて医工学の研究は遅れている。実学重視の東北大では研究者レベルの協力で人工臓器の開発などが進められ、2003年度に国の戦略的研究拠点育成事業として先進医工学研究機構(TUBERO)が学内で発足し、学際的領域の研究が本格化した。

TUBEROは生命機能科学、高度情報通信など4分野で医師と工学研究者が連携し、臨床研究や医療技術の産業化を推進。人工心臓や人工腎臓、抗がん剤観測装置の開発といった実績を挙げた。新設の医工学研究センターは医工学研究科とともに、本年度で5カ年の事業が終了するTUBEROの成果を受け継ぐ。

未来医工学治療開発センターは本年度、文部科学省の「橋渡し研究支援推進プログラム」実施機関の認定を受けたことから、8月に設置する。弘前大、岩手大など東北の大学を中心に国内外の研究機関や企業とも連携し、医療機器や薬剤の開発、再生医療などの臨床応用に結び付け実用化を図る。

東北大の庄子哲雄理事は「医工学の分野には将来的な課題が山積している。医工学の学問領域を基盤化したい」と話している。