『京都新聞』2007年7月3日付

免疫学研究や新薬開発の大型拠点
京大とアステラス製薬


京都大とアステラス製薬(東京)は3日、基礎免疫学研究の成果から革新的な新薬を開発する大型研究プロジェクトを開始したと発表した。京大医学部の研究棟内に「創薬医学融合ラボ」を開設し、京大とアステラス製薬、国際公募の研究者による共同研究を10年かけて進め、「日本発の新薬」の臨床応用を目指す。大学と企業が1対1で創薬の大型拠点を作るのは、日本で初めて。

京大が世界トップレベルの研究を進めている免疫・アレルギー分野で、免疫抑制剤で実績のあるアステラス製薬の化合物ライブラリーやノウハウを生かして研究する。アトピーやぜんそく、花粉症などのアレルギー疾患、リウマチなどの自己免疫疾患、がんや肝炎治療のための免疫活性化、臓器移植や再生医療のための免疫抑制剤などで、「世界売り上げトップテン」の新薬開発を目指す。

文部科学省「先端融合領域イノベーション創出拠点の形成」プログラムの採択を受け、最初の3年は年間計6億円の研究費で実施する。欧米では研究機関と企業の連携で大型創薬拠点が整備されており、日本発の新薬開発のモデルとしてプログラムが認められた。

「中核研究者グループ」としてプロジェクトに参加する成宮周医学研究科長は「基礎と臨床の境目がない時代にあって、医学研究の知識を患者のために生かしたい」、アステラス製薬の竹中登一会長は「いい薬をつくるには、ゲノム配列を網羅するだけでは駄目で、きちんと疾患を見なければいけない。免疫寛容など新しいメカニズムの研究から新薬を見つけたい」と話していた。