『信濃毎日新聞』2007年7月4日付

信大が上田市にナノテク繊維の産学連携拠点を開所


信大(本部・松本市)は3日、上田市の繊維学部内に、ナノテクノロジー(超微細技術)を使った高機能繊維を研究開発する産学連携拠点を開設した。東洋紡、クラレなど繊維大手を含む県内外の12社との共同プロジェクト。「健康」と「エネルギー」をテーマに、新たなビジネスにつながるイノベーション(技術革新)の創出を目指す。

産学連携拠点の名称は「ナノテク高機能ファイバー連携・融合拠点」。本年度、文部科学省の科学技術振興調整費の対象として採択された。年間事業費は約6億円。国が約3億円、参加企業も同額を負担。国は最長10年間、資金を提供する。

信大はイノベーションの「共通基盤技術」として、超微細なレベルで繊維の表面や内部構造をコントロールする技術などを研究。参加企業は、医学への応用を目指す「高機能メディカルデバイス開発技術」「超高強度・軽量ファーバー開発技術」など6グループに分かれて基礎研究の応用を図る。

実用化の目標時期は10−15年後。共同開発推進本部長を務める大口正勝・信大繊維学部特任教授によると、具体案には「軽量で折り畳み可能なフレキシブル太陽電池」「人工筋肉繊維による筋肉強化ウエア」などが挙がっている。

信大の小宮山淳学長は開所式で「世界的にリーダーシップが発揮できる拠点にしたい」とあいさつ。来賓として出席したクラレの網屋繁俊専任参与は「繊維業界は厳しい状態が続いている。新しい市場が生まれ、大きな利益をもたらすよう期待したい」と述べた。

この日は、世界中から研究者を公募する信大の「ファーバーナノテク国際若手研究者育成拠点」の開所式も行った。