『朝鮮日報』2007年6月27日付

ソウル大と東大が直面する危機と課題とは(上)(中)(下)
ソウル大・李長茂総長と東京大・小宮山宏学長が対談


ソウル大学の李長茂(イ・ジャンム)総長(62)と東京大学の小宮山宏学長(63)が26日、ソウル大学総長室で対談した。歳が1つ違いの両氏は同時期に工学部長を務め、ソウル大学・東京大学・北京大学が参加するベセット(Beijing‐Seoul‐Tokyo)会議でも何度か対面している。友人のようでありながら微妙なライバルでもある関係だ。今回小宮山学長は両校が主催するフォーラムに参加するために韓国を訪れた。

李総長はこの日、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領と大学総長との討論会に参加し同校に戻ったところだった。李総長は対談に先立ち、最近東京大学がソウル大学に朝鮮王朝実録五大山本を返還したことについて感謝の意を示し、小宮山学長はソウル大学が直ちに受け入れてくれ逆に感謝していると述べた。


◆21世紀グローバル社会での大学の変化と運営

▲小宮山学長=企業のための人材を育てるだけではなく、大学が未来の社会問題に対処すべきという点が重要だ。環境・エネルギー・高齢化問題に対処し、人類の生存を引き続き可能にするということ。社会がどのようなシステムを持つべきかについて研究し、方向性を提示することが大学の役割だ。

▲李総長=大学は真理探究を目的とする純粋学問の共同体としてスタートしたが、産業・情報社会を経て国家が戦略的に必要とする人材の養成に多くの関心を持つようになった。そのため、技術や職業にばかり過度に執着する人間を多く輩出した。今後はすぐに使える学問を学んだ人材よりも、基本を学び日々変化する社会に対応できる人材が必要だ。競争が激しくなった社会の弊害を克服するためには、人文科学と自然科学とが互いに理解し合うことが必要だ。


◆最高の知性を代表する2人の大学トップが直面する問題

▲小宮山学長=2005年の学長就任前、1年かけて任期中に実行すべき130項目のアクション・プランを作成した。この内容を一言で説明すれば、「知識の構造化」だ。人間の知識はアリストテレスの時代からこれまで1万倍以上増え、学術領域が非常に細かく細分化された。しかし、世界化時代にわれわれが解決すべき高齢化やエネルギー問題などは、はるかに大規模で複雑だ。細分化された知識を再び統合しこの問題を解決しなければならない。東京大学では、高齢化を研究する「加齢学」や「共生のための学問」などのプロジェクトを始めた。

▲李総長=基礎教育の強化と柔軟性・自立性・国際化などが大きな課題だ。しかし究極的には大学が創造的な雰囲気を造成し、未来における社会の発展への方向性を教育に反映できなければならない。そのためには開放と融和の精神が最も重要だ。自分はこれを総長就任(昨年7月)直後から強調してきた。時には各学問が壁を越えて相通じ、異質の部分が互いに出会う時に創造的な面が発揮されることもある。学内だけでなく社会に向けても壁を低くして直接貢献し奉仕する、開放と融和の姿勢が重要だ。


◆韓日両国の失われた10年に対する大学の責任は

▲小宮山学長=日本政府が不況を克服するプロジェクトを大学に提案したことがある。日本経済をどのように再建すべきかについて科学技術者80人以上が参加して話し合ったが、自分の隣で研究する教授たちが何をしているのかまったく知らなかったことを悟った(笑)。その時、小さな研究を融和させ医療用マイクロチップを開発し、病院での診療記録を電子化するなどのシステムを政府に提案した。このような複雑な能力を持つ人材育成も大学の役割だ。

▲李総長=アジア通貨危機当時、すべての大学に責任があったという前提に立てば、小宮山学長が話された「知識の構造化」とも関連する話になると思うが、科学の問題も巨大化・複雑化し、複雑系理論まで登場するようになった。社会と経済も同じだ。今や単一の学科で単純な問題を解いているような人材では解決できない。隣接する学問分野との交流を通じ、優れた人材のネットワークを形成し共同で問題を解決することを、これまで大学は疎かにしてきた。今後は「開放と融和」「知の構造化」を通じてこれらを解決しなければならない。


◆学科の壁を越える人材育成の努力は

▲李総長=長期的には学問間交流のための「自由専攻制」を導入する計画だ。早速来年から施行することを決定した点は、これまでの複数専攻以外に「連合専攻」「連携専攻」を新設することだ。さらに自分の主専攻以外に自ら探求する新しい専攻を破格的に設ける「学生設計専攻」を実施する予定だ。しかしこれだけでは不十分であるため、「持続可能」「宗教と戦争」のような複合的な科目を定め、他の専攻学生20人が集まって討論する方式の教育体制の構想も持っている。

▲小宮山学長=同じような問題意識がある。1、2年生全員に教養を学ばせ、最先端科学にも触れさせている。生命・情報など6つの分野に分けて名誉教授が参加し、自らも直接講義するという構想を持っている。また、教授2人が学生1人を指導するという試みも実行している。これは非常にうまくいっており、学生だけではなく教授たちも成長している。しかし、いくら考えても体系的で組織的な面では李総長の方が優れているようだ。


◆両校が協力可能な分野は

▲小宮山学長=サッカーをしても仲良くなる。学者たちも共に研究しなければならない。例えば博士課程の学生が1年は東大で、1年はソウル大で研究して戻り、学位を受けられるというアイディアもある。このような交流があったらいいと思う。

▲李総長=賛成だ。韓国と日本は歴史的に長い文化の根があるので、そのような話し合いをすることは重要だ。韓中日3カ国の工学部学生を交流させる大規模な計画もあるが、今後はさまざまなプログラムを通じて東アジア共通の価値を追及すべきだろう。


◆大学の自律性、学生選抜、政府との衝突

▲小宮山学長=この問題についてはその国の現状に最も適した方法を追求するのが良い。日本は米国のシステムを学んだ人たちが助言してきたが、特に役には立たなかった。米国のシステムが日本の実情に合わなかったのだ。日本は韓国の大学修学能力試験に当たるセンター試験と本試験で選抜するが、この過程で政府が口出しすることはない。教育は経済用語で言えば「失敗しやすいマーケット」であり、一度失敗すれば回復に多くの時間がかかる。

▲李総長=大学は優秀な人材を育てなければならず卓越した側面も重要だが、一方で社会に対する責任もある。政府は社会的安定と公平さを強調するため、大学の考えと相容れないこともある。大学も多様な人材を受け入れ、社会に譲歩し妥協する姿勢が必要だ。