『中央日報』2007年6月26日付

「教育システム崩壊は一瞬…再建には30〜40年」東大小宮山総長単独インタビュー


「アジアから出たアイディアを世界に拡散させること、それが国際化です。これには先進国である韓日の責任があります。こうした国際化は大学の競争力から始まり、大学が存在する理由でもあります」−−。

小宮山総長は大学競争力の要件とこれを国家競争力につなげる案を強調した。

次は一問一答。

−−21世紀に入って世界の有数大学が競争力の強化を掲げている。

「新しい概念をどれだけ発展させることができるかが真の競争力の源泉だと考える。それが可能なのは大学だけだ。社会が要する大学の役目でもある」

−−東京大学の発展は日本の競争力強化にどんな貢献をしているか。

「今年で130周年を迎える東京大学は世界的研究成果としてアジアのアイディアを世界に拡散しようと考えている。これについては韓国と日本の役割が重要だ。これがまさに国際化であり、東京大学の国際化は日本の国際化と直結する。今、日本で最も重要なのは実質的な国際化だからだ」

−−非英語圏大学が世界的大学になるにはどうすればいいか。

「午前に講義した“持続可能の科学”もそうだし、ジェロントロジー(加齢学、高齢化に対する学問)も例に挙げることができる。どの国で学問が発生したのかによって内容が変わる。アジアで加齢学を作ればアジアに適合する学問となる。グローバル化は全地球的に起きるが、地域性が非常に重要だ」

−−新しい学問・学科開設の際、政府の制裁はないのか。

「むしろ文部科学省から“競争的経費”という名目の支援を受ける。持続可能な科学を研究するための統合システムとして大学の連合を作った。この案が政府に採択され、5年間毎年8億円の支援を受ける」

−−東京大学は優秀な学生たちをどうやって選抜するか。

「国家全体が行うセンター試験をまず受ける。50万人ほどが受験する。この試験で定員の4〜5倍程度の学生を選抜した後、(東京大学だけの)独自の試験を行い、優秀な学生を選り分ける。センター試験より独自の試験の反映比率の方が高い」

−−学生選抜に対して政府のガイドラインはあるか。

「全くない。文部科学省に事前申告することもしない。報告程度ならあっても基本的に大学の内部問題に文部省が関与することができない。大学の自治問題は比較的確立された概念だ。大学別でも選抜方式は多様で独自の試験がないか、あるいはセンター試験を反映しない所もある。大学間の規定もない」

−−韓国では教育部が大学に内申反映の割合を指示し、対立が激しい。

「どんな入試が良いかは国別で違うと思う。アメリカMIT(マサチューセッツ工科大)は推薦だけでも入学することができるなど、方式が違う。国別でシステムが違って、どちらがいいということはできない。ただ、気を付けたいことは大学のシステム、教育のシステムは一度崩れれば再建しにくいという点だ」

−−教育システムの崩壊した例はあるか。

「過去、日本は過度な高校入試競争を減らすために公立高校を対象にする学校群制度を取り入れた。しかしその結果、公立高が衰退して私立高が浮上した。優秀な生徒たちが私立高に流れたのだ。私立高は公立高校より数が少なく、ますますひどい入試競争を生んだ。競争を抑制しようとしたところで生徒や親がどう対応してくるかは別問題だ。予測しにくい。崩壊は瞬間だが再建には30〜40年がかかる」

−−政府の役割はどこまでか。

「韓国の状況をよく知らないので直接判断はできない。少なくとも先進国では個性と創意力を発展途上国よりもっと重視する。大学も同じく個性化が重要だ。韓国はすでに先進国だ。政府のすることが大学の個性化にプラスかマイナスかはよく分からない」

−−どうやって世界的な大学になったか。

「教育と学問の蓄積をもとに成り立った。教職員の自律、分散、協助が理想的だと思う。教員には自由を与えなければならない。総長が干渉してはいけない。良い先生を採用して自由にすることが大学をよくするのだ。これは歴史から学んだのだ。大学の自治とも関連がある」

−−大学の自治とは学内だけではなく外部からの自治を意味するか。

「そうだ。権力で大学が自由ではなければならない。ただ、学問の内容に限ってだ。システムの問題は社会と相談して妥協しなければならない」

−−教授の競争力強化のための評価もあるか。

「教授たちの研究成果が大学の最も基本的な力だ。競争力を上げるためには評価が重要だ。東京大学の教授には報酬を通じてインセンティブを与えない。お金より時間をくれ、行政業務や雑務を減らしてくれと言う教授たちの方がもっと多い。反対に10%退出などの不利益も必要だと思う。各学問の分野でどんな評価方法を選ぶのがいいのか考えているところだ。教授の評価はほとんど完成段階だ」

−−教育省はソウル大を含む国立大を2010年まで法人化する計画だ。法人化を控えたソウル大に助言する点は。

「日本の国立大が法人化で経験した試行錯誤を参考にするに値する。法人化で自律性を確保することは非常によいことだが、予算問題が負担であることは事実だ。東京大学も法人化をきっかけに各部門で1%程度ずつ予算を減縮した。特に病院の予算を3%減らした。法人化42大学のうち8大学病院が赤字である点は参考になるだろう。もちろん日本と韓国の大学には違いがあることを認めて設計しなければならない」

日本の東京大学の小宮山宏総長(63)は25日午後、本紙とのインタビューで「社会が願う新学問を発展させることができる所は大学だけ」として大学の役割を力説した。英語圏大学に比べて世界的大学に成長が不利なアジアの大学が国際競争力を持つ案はまさにこの「新学問の発展」という話だ。

インタビューはソウル大で外部貴賓を迎える湖巌(ホアム)教授会館迎賓館で行われた。最初のインタビューは小宮山総長の忙しい日程を考慮して30分に制限された。しかし彼は本誌取材チームに会うやいなや「時間を過ぎてもかまわない」と快諾した。インタビューは通訳なしに日本語で1時間ほど続いた。小宮山総長は簡単ながらもはっきりと語った。特に東京大学の発展案や競争力強化案に対する質問には積極的だった。大きなジェスチャーで東京大学を世界の大学にしようとする意志を強調していた。

韓国大学の内申問題については「昨日、到着してから聞いた」としてあまり語らなかった。しかしインタビューの中で、大学の自治が重要で東京大学は政府の干渉を受けないという点をはっきり伝えていた。ソウル大のある教授は小宮山総長が韓国の内申問題を伝え聞いた後「そんなことがあったのか。もったいない。大学の競争は認めて、放っておくものではないのか」と言ったと伝えた。同総長は26日、ソウル大李長茂(イ・ジャンム)総長と対談後、出国する。


整理=パク・ソヨン記者 <クォン・グニョン記者>