『毎日新聞』愛知版2007年6月24日付

シンポジウム:愛教大で教員養成など議論 教育改革に批判多く−−刈谷 /愛知


教育改革の大きな柱になっている教員養成と教師教育を考えるシンポジウムが23日、刈谷市の愛知教育大学で開かれた。題して「教員養成改革の動向と今日的課題−−今後の教師教育をどのように展望するか」。教育学者や教師らでつくる中部教育学会(会長、植田健男・名古屋大大学院教育発達科学研究科教授)の主催で、現在の教育改革に対する批判的な意見が目立った。

最初に植田会長が教育基本法の改正や教育再生会議の動きなど、最近の矢継ぎ早な教育改革について「学校現場だけでなく、大学でも戸惑いと混乱が広がっている」と言及。「教員の多忙化や燃え尽き問題が一向に改善されないどころか、深刻化の様相だ。社会人教員の大量採用なども含め、教育現場の現状に対する無理解を感じざるを得ない」と訴えた。

続いて、3人のパネリストが発言。教員養成の歴史を研究している船寄俊雄・神戸大教授は「日本の教育が画一的だったのは、教育課程が国家統制されているからではなく、教師自身が自らの教養や文化、社会との接点をつくり出さなかったからだ」という教育学者の言葉を引用。「教員養成には社会や人生などに対する幅広い教養が重要だ」と強調した。

教員養成カリキュラム開発に取り組む山崎準二・東京学芸大教授は「若い教師ほど自身の小中学校での恩師の影響から教職を志している。だが、就職後の現実は厳しく、多くが辞めたい気持ちを抱く。特に、子供たちの能力差の大きさや、教師に対する社会の冷たい目に衝撃を受ける。こうした壁を乗り越える教員養成が大事」とデータを示して語った。

さらに、添田久美子・愛知教育大准教授は、愛知県と名古屋市の教員採用状況について報告。団塊世代の定年に伴う大量の退職と採用がもたらすさまざまな問題点を指摘した。会場からは教育現場での事例報告や教員養成のあり方が述べられ、パネリストとの間で意見が活発に交わされた。【安間教雄】