教育への国家統制を強化する教育三法案の慎重な審議を求める

2007年6月6日 東京学芸大学教職員組合第64期定期大会


いわゆる教育三法案(学校教育法等,教育職員免許法及び教育公務員特例法,地方教育行政の組織及び運営に関する法律の「改正」案)は5月18日に衆議院で強行採決されて通過し,現在参議院文教科学委員会で審議が進められている.政府には6月下旬の会期末までに法案の成立を図る意図があると伝えられている.
これらの三法案は,昨年12月22日に公布・施行された06年教育基本法を具体化することを目指して,それぞれの基本原理に重大な変更を加えるものとなっている.教育に深く関わっている教員養成系大学の組合員である私たちは,以下のような観点から教育三法案を拙速に議決せず,慎重な審議を行うよう要求する.

1.これらの法案は教育基本法のような理念法ではなく,実際の教育のあり方を決めるものであり,現場の意見を十分に尊重しながら作られなければならない.しかし,法案の内容を検討する中央教育審議会はわずかひと月でこの法案を審議した.また反対や疑問を呈する意見が多くあげられる中,衆議院の教育再生特別委員会でも審議が十分とはいえないまま採決が強行された.参議院でこれを繰り返してはならない.

2.教育三法案の大きな問題点として,統制,競争,格差を内容とする新自由主義的な教育の国家統制を確立しようとしている国の意図があげられる.地方自治体からは地方分権の流れに逆行しているとして強い懸念が表明されていることに示されているように,この点について慎重な配慮が求められる.

3.副校長,主幹教諭のような管理的なポストの新設による学校内の階層化が進むとともに,教員の免許更新制などによって教員の身分の不安定化が進む.

4.免許更新制度の新設は,不適格な教員の排除が目的であるのならばそれは現行制度でも可能であり,10年研修制度もある中で,屋上屋を重ねるに等しい.また,免許更新講習を引き受ける大学にとって,教職員の負担は膨大なものになる.講習の内容や体制が十分に検討されていないまま,更新制度が一人歩きすることがあってはならない.

5.教育基本法改定に合わせて学校教育法における大学の目的に社会貢献が追加された.社会貢献自体は必要なことであるが,現在の運営費交付金削減や競争的経費化の動きとあわせると,大学における学問の自由が空洞化する恐れがある.

以上