『山陰中央新報』2007年6月12日付

島根でも進む研修医の大学離れ


研修先や勤務先に大学を選ぶ医師が減っている。二〇〇四年度から始まった新しい臨床研修制度の影響で、都市部の市中病院に人気が集まり、島根大は制度前に比べてほぼ半減し、研修医の大学離れが深刻化している。

臨床研修制度は、医学生の研修先を、医学生と病院双方の希望に応じてコンピューターで決めるマッチング方式。従来の研修医は大学の医局に入局するのが一般的だったが、一般病院にも選択肢が広がった。

島根大は制度前、一学年九十五人のうち五十人近くが残って付属病院で研修したが、制度の初年度は二十六人に急減し、定員五十一人に対するマッチング率は51%。〇五年度以降も十七人、三十一人、二十七人で以前の半分の水準にとどまる。

ただ、〇四年度以降に、島根県内では他の病院で毎年、二十数人が研修しているため、県内に残る若手の研修医の人数そのものは、制度の導入前と大きく変わっていない計算になる。

研修医の大学離れは全国的な課題。鳥取大医学部付属病院でも本年度、定員四十三人に対し十六人だった。制度前の〇二年度の大学残留率と制度後の〇六年度の大学帰学者率を比べると、中国地方の減少率は四割近い。

新臨床研修制度が、地方の病院への医師供給源となっていた大学病院での人材不足を招いたことで、大学による病院派遣医の引き揚げに連動し、慢性的な医師不足に拍車をかけている構図だ。