平成19年5月17日

教育再生会議第姉分科会(教育再生分科会)の審議に対する緊急提言

社団法人日本私立大学連盟

 中央教育審議会で進められている教育振興基本計画をはじめとする教育改革の議論と教育再生会議その他の会議体での議論がどのような関係にあるのかは、国民にとって明確でないばかりか、国全体の教育計画がどのような方針で立案されるのかが理解しにくい状況にある。
 以上の点に留意されるとともに、特に以下の諸点について、十分なご審議をお願いする。

1.大学学部教育の質の保証に関する点
(1)高等学校の教育課程を整備・改善し、国として、高校卒業者あるいは大学入学者の学力が保証できるようにする。
(2)わが国の大学教育の共通基盤として、分野ごとのミニマム・リクアイアメントを定める仕組みを構築する。

2.大学・大学院の国際化に関する点
(1)国際化を図るという観点から9月入学制度が必要であるという議論があるが、9月入学が機能するためには、9月卒業生受け入れのために、政府諸機関、企業のリクルート・システムを再構築する必要がある。
 また、9月入学制度を全大学で実施するならぱ、社会全体のインフラ整備を進めることが必要である。一方において、4月入学と9月入学制度を並存させ、9月入学制度の拡大ならぱ、初等・中等教育においてセメスター制度の実施が必要である。これらの実現なくして9月入学制度は有効に機能しないと考える。
(2)国際化のためには、日本の学位を求める傾向のある正規留学生増加策に留まらず、まず大学,大学院の教育を国際的水準以上のものにすることが必要である。そのためには、国際共通語である英語教育強化を含めた、大学・大学院の教育改善が喫緊の課題である。
(3)わが国の学生が海外に留学しやすいように奨学金制度を完備し、また、海外から交換留学生を招致しやすいように宿泊施設等のインフラを整備することが必要である。

3.教育財政に関する点
(1)高等教育費予算全体の増額は、大学の国際競争力強化と日本の未来にとって極めて重要である。わが国の国内総生産(GDP)に対する高等教育への公財政支出を今後、欧米諸国並み(約1%程度)まで引上げる。
(2)とりわけ、国立大学が独立法人化されたこと、改正教育基本法第8条で私立学校への功成が規定されたこと等を踏まえ、学部学生の7割強の教育を担いながら、私学助成は国立大学と比べて極めて少ない。私立大学の学費負担者は、税金を通して国立大学に通う学生の授業料の分まで二重負担を強いられていることから、私立大学への大幅な財政支援強化は、日本の未来のために緊急の課題である。
(3)社会全体として、安心・安全な教育研究環境の整備が必要であることは言さまでもない。国は、狭隘で老朽化している私立大学の教育研究施設に対し、学生等の安全確保と衛生管理を最優先する観点から、国立大学の整備計画と同様に私立大学等に特化した施設整備計画を策定し、緊急に実行する義務がある。
(4)国民の立場からいえば、高等教育の「教育」にかかる経費の国費負担は、国公私立を同じ条件にすべきであり、国立大学と私立大学との適正な競争が可能となる環境(イコールフッティング)を実現する観点から、国立と私立の学生数を勘案すれば、現状の私学助成を約6,000億円増額する必要がある。
(5)民間資金を教育に活用しやすいように、寄付金に対する控除率の引上げ等、税制改革を行い、同時に大学等への寄付が一般化するような社会通念を確立しなければならない。

以上