『読売新聞』2007年5月30日付

国立大比較 財務ランク1位は阪大…「コストで差」東大6位


全国83国立大学法人の財務総合ランキングを国連大学職員の大西好宣さんと依田武和さんが作り、国立大学マネジメント研究会の会報に発表した。

2人は海外からの留学生支援の一環で、大学の財政を調べている。分析は、各大学が公表している2005年度の財務諸表などのデータを使用。収入規模を示す経営収益や、土地建物などの総資産、総収入に占める国の運営費交付金の比率、研究活動の活発さを示す教員1人当たりの研究経費、大学付属病院の収益性を示す診療経費比率など、21項目を点数化して比較した。

総合大学と単科大学など、条件の違う大学を単純に比較するのは難しいが、財務内容の良い大学は、資金を借り入れて研究や教育のために投資でき、将来の発展の余地が大きいと言える。逆に財務内容の悪い大学は、新しいことに挑戦しづらく、単独の生き残りが困難になる危険性もある。

ランキング1位は大阪大。総資産が東京大に次ぐ2位で規模が大きいのに、人件費比率が低いなど経営効率が高く、研究活動も活発なのが高評価となった。2位は北海道大で、旧帝国大学の大規模校が続いたが、3位以下は長崎大、千葉大、宮崎大、東京大と少し意外な結果に。

上位20校は、15位の東京工業大を除くと、付属病院を持つ大学ばかり。学生の定員が1万人以上で10学部以上ある総合大学が、上位20校の半数を占めた。

一方、医科系学部を持たず、文系の学生数が理工系の2倍を上回る文系中心の大学は、一橋大の46位以外は下位に集中。教育系単科大学も東京学芸大の45位が最高だった。

岩手大や和歌山大など、医学部を持たない地方大学もすべて30位以下だった。

大西さんは「上位は、病院の診療や企業との共同研究などで、自ら収入を得ている大学。独自の資金源を持たず国の運営費交付金の依存度が高い大学は下位に集まった」と分析する。

ただ、付属病院を持つ42大学のうち、病院の採算性の良さで順位を上げたのは、宮崎大や山形大など19校だけだった。東京大や京都大などの付属病院は、「職員が多く、研究や教育にコストをかけている」(大西さん)ため、採算性が悪く、逆に順位を下げた。

東北大の米沢彰純(あきよし)・准教授(教育社会学)は「財務ランキングは、法人の経営者の通信簿。企業が共同研究などで資金を出す上で、信頼に足る大学かどうかを判断する目安になる」と評価する。ただ、「教育や研究の経費を削れば、見かけ上、財務は良くなるだけに、財務ランキングだけで大学を選ぶのは危険」とも受験生たちに助言している。(吉田昌史)