『北日本新聞』コラム 天地人 2007年5月26日付


国立大学運営交付金をめぐり、財務省が発表した試算に異議がある。交付金は教員人件費や研究費に充てられる補助金だ。これまでは大学規模などで決まったが、試算では競争原理を導入し、研究成果などの実績で配分を決めるとする。

こうなると先端研究や企業との連携に力を入れる東大や京大など旧帝大に手厚くなる。地方は分が悪い。富山大は六割も減額されるという。しかも総額は年々減らすのが前提。お先真っ暗だ。

法人化を機に独自の営業努力ができるようになったが、交付金が頼みの綱に変わりはない。減額上位校を見れば、教育や芸術系の単科大が並ぶ。教員養成や芸術教育は、成果が見えにくい。本来、競争になじまない。補助金の大幅削減をちらつかせ、さらに統合を進めようとの思惑が透けて見える。

文部科学省は、地方国立大の地域に与える経済効果を試算し、反論した。大学は雇用を生む。学生の消費も無視できない。一大学で最高七百億円と見積もり、プロ野球球団より効果が大きいと発表した。

地方に国立大がなければ、子どもへの仕送りで都市へ流出する地方の金は増えるばかりだ。何より地方の文化や産業、社会を支える柱になっている。国の財政の都合で競争原理を導入し、地方の国立大が輝きを失うようなことは納得できない。