『読売新聞』2007年5月16日付

東北大が新研究組織…若手中心、融合領域の学問開拓


東北大は、複数の領域にまたがる新しい学問を開拓しようという大学院生や若手研究者を支援する全学的な新組織を発足させた。

こうした融合領域の支援は、ナノテクノロジーなど限られた学問分野間では前例があるが、文系から理系まですべての分野にまたがる全学的組織は国内で初めて。同大は「研究大学」としての魅力を高め、大学間競争に打ち勝つことを目指す。

新組織の名称は「国際高等研究教育機構」。学内からよりすぐった「エリート大学院生」を支援する「国際高等研究教育院」と、30歳前後の若手研究者を採用する「国際高等融合領域研究所」の2部門がある。

これまで、若手研究者が従来の分野を踏み出した野心的な研究を行おうとしても、指導教員につぶされるケースが多かった。学内のリーダー的な研究者を中心に全学的な組織を構築することで、「出る杭(くい)を伸ばす」体制作りを目指す。

研究教育院は昨年4月に先行スタート。世界的な研究拠点を支援する文部科学省の「21世紀COEプログラム」に選ばれた同大の13プロジェクトの教員らが、内容も多彩な46の指定授業を行った。今年度は、授業数を75に増やし、ノーベル化学賞受賞者の田中耕一さんや、金属材料研究で知られる井上明久学長ら、各分野の国際的リーダーによる「融合領域研究合同講義」も開講する。研究の体験談や問題意識の持ち方などについて講義、院生に研究の楽しさや分野横断的な視点の大切さなどを伝える。

修士課程の学生を対象にした「修士研究教育院生」(定員50人)は、指定授業を6単位以上とり、自分の研究計画を提出するのが条件。選ばれると、授業料相当の奨学金(約50万円)のほか、学会旅費など5万〜10万円が支給される。分野の違う複数の教員から指導が受けられる支援もある。

今年度は41人から申請があり、25人が選ばれた。申請者が定員より少なかったが、井原聡・研究教育院長は「審査が厳しいと聞いて、自己規制した人が多かったようだ。定員未満だからと言って、審査は緩めていない」と話す。

来年度からは、博士課程の学生を対象にした制度も始め、金銭面での援助を拡充したり、複数の博士号を3年間で取れるようにしたりもするという。

国際高等融合領域研究所は、13のCOEプログラムの中から、博士号を取得して間もない8人の若手研究者を任期5年の助教(特別研究員)に選んだ。自由に使える年300万円の研究費が支給される。

井原院長は、「我々は融合領域の研究者育成の枠組みを作るだけ。どんな新しい融合研究が生まれるか、若者たちに期待したい」と話している。(木村達矢)