『岩手日報』2007年5月15日付

岩手大が東京で夜間大学 技術力向上に一役


岩手大は、中小製造業が多い東京都板橋区、北区と連携し技術者対象の「ものづくり夜間大学」を開設する。同大の教授らが出向いて「金型技術」をテーマにした講義や、工場を訪問し助言を行う。講義は7月から5カ月間。国内初の金型研究機関がある同大の技術と知識が、首都の町工場の技術力向上に一役買う。講座実施を機に人的交流を進め、将来的には共同開発や在京技術者の県内での起業、企業誘致など本県産業の活性化にも結びつける考えだ。

夜間大学は、両区の施設で実施する。同大大学院工学研究科金型・鋳造工学専攻長の岩渕明教授をはじめとする6人の教授陣が原則毎週水曜日に講義、翌日には参加者の企業を訪問、加工技術などを助言し製品開発力を高める。

一日当たりの講義は90分間。「金型材料」「設計」「加工方法」「メンテナンス」の4コースで、一コースにつき5回の講義をする。4コース各20人で、延べ80人が受講する。

両区が教授らの旅費や宿泊費などの経費を負担、教授らは講義料なしのボランティアとなる。同大東京オフィスの客員教授が両区職員とともに、5月中にも受講者募集を始める。

6月13日に運営協議会を発足させ、中小企業経営者や従業員を対象に「オープンカレッジ」を開く。大野眞男副学長と岩渕教授が、取り組みに対する大学側の理念などを講演する。

岩手大はこれまで、両区の企業や研究機関などが連携し地域課題の解決に向けた活動に取り組む組織「KICCプロジェクト」と交流を重ね、今回の夜間大学が実現した。不況下で技術革新を進めてきた両区の町工場の景気が上向いてきたことも開設を促した。

同プロジェクト推進・運営委員で、若手従業員を夜間大学に受講させる板橋区の松本精機代表取締役社長の鈴木敏文さん(56)は「最先端技術を体系的に学ぶ仕組みは、大手企業にはあっても中小零細企業はないので意義がある」と評価。「地方が低賃金の労働力を提供する従来型の連携ではなく、岩手と東京が対等な立場で知の連携を進め、産業力を高めることが大切」と強調する。

同大地域連携推進センター長特別補佐の小野寺純治教授は、8月に盛岡市が同大敷地内に開設する盛岡市産学官連携研究センター(コラボMIU)の運営を視野に、「将来的には東京の企業経営者の方々も入居し共同研究を進め、新規創業支援や研究開発型企業の誘致を推進できれば」と期待している。