『毎日新聞』2007年4月26日付

教授定年:65歳を60歳へ 東大先端研


東京大先端科学技術研究センター(先端研、東京都目黒区)は25日の教授会で、先端研に所属する教授の定年を今年度から60歳とする方針を決めた。東大は教員の定年を65歳まで延長する計画を進めているが、先端研だけは事実上の引き下げとなる。ベテラン研究者の働き方を多様化する一方、人事の停滞をなくし、先端分野の研究を活性化させる狙いがあるという。

東大教員の定年延長は01年度に始まった。60歳定年を3年に1歳ずつ引き上げ、13年度には65歳定年とする計画で、現在63歳まで延長されている。しかし、先端研は、定年を延長前の「60歳」に戻し、内規にも明記する。

今年度中に60歳になる先端研の教授は年度末で退職し、退職金も受け取る。その後も先端研で研究を続けたい場合、教授会が承認すれば「特任教授」として再雇用される。所内に独立の研究スペースを持ち、学生の指導や授業も希望すれば続けられるが、給与は本人が獲得した外部資金(企業の寄付金や公的研究費など)でまかなう。

先端研によると、教授23人のうち3人は既に60歳を超えており、今年度中に2人が60歳の誕生日を迎える。この5人が新方針の対象になるが、「終身雇用」を前提に採用されたため新方針は強制されない。どちらを選ぶかは自分で決められる。

宮野健次郎所長は「優れた研究者であれば、自分で自分を雇えるだけの研究費を獲得できる。そういう人には雑用を減らし、年齢に関係なく研究してもらう。一方、定年を引き下げることで人事の停滞をなくし、新しい人材を登用できる」と話す。

国立大の定年は、大学ごとに決めることができる。東大教員の定年延長は、公的年金の支給開始年齢引き上げと同調していたことや職員を対象外にしたことで、学内外から批判も出た。【元村有希子】