『読売新聞』2007年4月25日付

税制改革議論スタート、諮問会議が成長力プログラム決定


政府の経済財政諮問会議(議長・安倍首相)が25日開かれ、6月にまとめる経済財政運営と構造改革に関する基本方針(骨太の方針)に向け、税制改革と歳出歳入一体改革についての議論を本格的にスタートした。

丹羽宇一郎・伊藤忠商事会長ら民間議員は、税制改革の基本哲学について、「受益と負担の双方を含めた制度全体の再設計を通じ、真に必要な人に必要な対応をすべきだ」と提言し、税と社会保障を組み合わせた経済格差対策の必要性を訴えた。

税を減額する「税額控除」と、社会保障給付を組み合わせた格差対策の仕組みとして、英国などが「給付つき税額控除」制度を導入して一定の成果を上げている。同様の仕組みは、今後の税制改革論議の焦点の一つとなる。

また、民間議員は、企業活動や個人の就労意欲を阻害しないよう、「広く薄く」の観点から法人税や所得課税を設計するよう提言し、企業や個人でそれぞれ課税対象を拡大していく方向を打ち出した。

地方分権推進の観点から、民間議員は、国と地方の税収比率(現在6対4)を5対5にするよう求めたが、尾身財務相は「もともと税源がない地方の税収が減り、格差拡大につながる」などと反論し、結論は出なかった。

歳出歳入一体改革について、安倍首相は「公共投資を含めて、08年度予算でも歳出改革を強力に推進したい」と述べた。

一方、諮問会議は25日、人口減少社会でも経済成長を続けるための政策「成長力加速プログラム」を決定した。IT(情報技術)活用や規制緩和で効率化を進めるなどし、労働者1人あたりの国内総生産を示す「労働生産性」の伸び率を今後5年間で1・5倍に高める目標を正式に決めた。

6月にまとめる「経済財政運営と構造改革に関する基本方針(骨太の方針)」に、安倍政権の経済成長戦略の柱として反映させる方針だ。

プログラムは、〈1〉ITでサービス分野の生産性を高める「サービス革新戦略」〈2〉大学改革などで研究開発を推進する「成長可能性の拡大戦略」〈3〉フリーターの就労支援や中小企業対策などの「成長力底上げ戦略」――の3本柱からなる。