『毎日新聞』2007年4月25日付

キャンパスNOW:TOPICS 少子化対策や子育て支援、兵庫県と大学連合が協定


兵庫県と任意団体「大学コンソーシアムひょうご神戸」(理事長・野上智行神戸大学長)は先月末に少子化対策と子育て支援に関する協定を結んだ。行政と大学がお互いの特色を生かしながら少子化対策に取り組んでいこうという試みで、全国的にも珍しい。

同コンソーシアムは昨年6月、県内の30大学と10短大が地域社会や産業界との連携強化を目指して発足した。神戸市内の大学をみても、総合大学をはじめ保育、芸術、外国語、流通、医療、薬学など幅広い分野での教育、研究が進められており、大学間の連携、協力をもとに国際交流なども促進する。今回の協定は、地域交流活動の一環で、県と協力して子育て支援事業などに関するシンポジウムや研究会の実施、学生たちの参加などを進めていく方針だ。

県と神戸大経済経営研究所は昨年11月、少子化に関する調査研究などについて連携していくための協定を結んだ。両者で少子化問題研究部会を設置し、今年2月にシンポジウムを開いた。

大学による地域の子育て支援活動としては、05年9月に地域の空き施設を活用した神戸大「あーち」が挙げられる。神戸大大学院総合人間科学研究科が中心になって旧灘区庁舎(約350平方メートル)に設置した、親子が気軽に集まれる遊び場。学生や研究者が常駐して子育て相談にも対応している(毎週火〜土曜、10時半〜17時に開館)。

兵庫県立大環境人間学部は、大学キャンパス内の施設を活用し、子育て支援センター(げんきっこ新在家)として地域の親子を対象に活動している。学生スタッフと高齢者が運営し、住民や学生のふれあいの場にもなっている(毎週木、金曜の10時〜11時半に開設し、月〜金曜の18時〜19時半には学童保育後の子供たちを預かっている)。

子育て中の親の悩みに対して甲南大は心理臨床カウンセリングルームを開いている。乳幼児と親を対象に児童心理、臨床心理などの分野からの「親子相談」、臨床心理士、保育士や大学院生が親子と一緒に遊ぶ「親と子の遊びの教室」がある。これらの子育て支援活動は、「未来の親」となる学生にとっても貴重な子育て体験学習になっている。

少子高齢化における大学全入時代という大きな変革期を迎え、大学はいまや地域社会とのかかわりを抜きに生き残れない。各大学ともその特色をフルに生かしながら、大学間の協力や行政との連携を模索している。

県の大内誠・少子対策課長は「少子化対策は予算を注ぎ込めばできるものではなく、多様な取り組みが必要だ。大学や地域のさまざまな資源を活用し、連携を強化していきたい」と話している。【池田知隆】