『朝日新聞』2007年4月22日付

一般大学、初の海外勢 米テンプル大、09年度にも開設


米ペンシルベニア州立テンプル大学の「テンプル大学日本校」が、09年度をめどに日本に学校法人を設立し、一般の大学を開設する。大学に校地・校舎の所有を義務づけた規制が4月から撤廃されたためで、海外の大学が法人設立を通じて日本に本格進出する第1号となる見通し。新大学の卒業生は日本の大学の学士号を取得できる。「大学全入時代」の学生争奪戦が激しくなりそうだ。

テンプル大は82年に日本に進出し、海外大学日本校の草分けの一つ。現在は約2800人の学生が在籍しており、6割の1700人が日本人学生で、残りは海外からの留学生だ。東京と大阪、福岡の賃貸ビルに教室を持ち、授業は本校のカリキュラムに沿って英語で行っている。

05年には、在日大使館のお墨付きなどが条件の「外国大学の日本校」の第1号に認められ、学生が通学定期に学割を使えるようになった。ただ、校地・校舎を所有していない点などが日本の大学の基準を満たしておらず、同大学日本校の卒業生は米国の学士号や博士号などしか取れない。

政府は03年から、構造改革特区にあれば校地・校舎が借り物でも大学の設置を認めてきたが、4月からこれを全国に拡大。投資負担を嫌って土地・建物の購入に二の足を踏んできたテンプル大は「(一般の大学開設に向けて)最大の問題点が解決した」(カーク・パタソン学長)として学校法人の設置と大学の開設を決めた。

大学開設には、全学年がそろうまでの4年間定員割れが続いても耐えられるだけの資産を持つことや、現在は日本の基準を下回っている教員の増員などについて文部科学省と交渉し、大学設置・学校法人審議会で認可されることが必要。パタソン学長は「なるべく米国式の教育を提供できるよう、文科省と調整したい」としている。

海外の大学の日本校は留学ブームに乗って80年代に相次いで設立され、ピーク時には全国に50校近くあった。しかしブームが去ると次々と撤退。「外国大学の日本校」もテンプル大など6校にとどまっている。

一般の大学になると、教育水準を維持するため一定数の教員を確保することなどが課せられる。一方で法人税が優遇され、教員数や留学生の受け入れ数などに応じて補助金をもらえるなどメリットも大きい。